私の記憶では前年の「レベッカ(1940年)」と比べてそれほど面白くなかった印象だった。覚えているのは有名な光るミルクのシーンとラストシーンの落ちだけだった。「断崖」だけにね。でもちょいと見のつもりで見始めたら意外にサクサクと見られてしかも落ちを知っているだけにヒッチコックのミスディレクション(誤誘導)の仕方が巧みだな〜と感じ入った。それとやはりジョーン・フォンテインの演技がいいね。イギリスの金持ちの娘で堅物のオールドミスが今で言う典型的ダメンズのケーリー・グラントを好きになっていく描き方や結婚してからの夫への疑惑が膨らんでいく様子などアカデミー賞を獲っただけのことはある。冒頭では冴えない見栄えの彼女だが結婚後、夫への疑念にとりつかれる様子は美しさが際立つ↓。
途中クスッと笑ったのは夫の好きな女性推理小説作家イゾベル・セドバスクの写真だ。間違いなくアガサ・クリスティーをパロっているヨ。セドバスクは主人公らとも知り合いで後半ではかなり関わってくる。
そしてこの映画で最も有名なシーンが光るミルクだ。ベッドで休んでいる妻に夫のケーリー・グラントがミルクを持って階段を上がるだけなのだが、夫妻は毒殺の会話をセドバスクとしたり保険が自分に掛けられていると知った妻はもしかしたら・・との疑念(suspicion)が最高潮に達した場面でもあった。白黒作品ならではの効果とも言える。ヒッチコックはフランスの映画監督フランソワ・トリュフォーとの共著「映画術」で「白く光るミルクがとっても印象的で」と言ったところ「あれは光る豆電球をミルクの中にいれたんだ」と少し自慢げに語っている。上の写真でも分かるように運ぶグラントの顔は真っ暗で表情は見えない。毒が入っているかもしれないミルク・・それを置かれて夫を見つめる彼女の表情、いいねえ。
この後どうなるのか。物語は後5分ほどで「The End」を迎える。以前、さほどでもないと思っていたけれど飽かずに1時間40分ほど見続けさせたのはさすがヒッチコックと思った。NHKBSは画像処理が非常に良く大画面で見ても遜色ない。「断崖」は私の加入しているUーNEXTで見られるがTVで鑑賞できて良かった。軽くこてる日記ネタにでもなればと思って見たけれど、この映画、意外な拾い物だったね。
あ!そうだ忘れていた。ヒッチコック映画ではおなじみのヒッチコック自身がちょこっとカメオ出演するシーンは気づかなかった。だいたい46分頃経過のポストのそばで何かを見つめているふとったおっさんが彼だった。いつもながら笑わせてくれる。↓。
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