また救急外来に戻ると、スタッフによる心臓マッサージは続けられていたが、何度かの強心剤にも反応しなくなり、息子さんらを呼んで心肺停止から1時間を経過いしておりこれ以上の蘇生は無理であると伝えた。涙をこらえながら息子氏は納得し、それで蘇生を止めさせた。それでなぜこのような事態になったのか、亡くなったばかりでつらいだろうが、死後CT(Autopsy imaging:Ai)をやってみてはどうかと提案した。特に発症の仕方が脳卒中の中のくも膜下出血を疑わせるからと説明した。料金が普通より高くはなるが、息子氏は同意してくれたので、放射線科の当番を呼んで実施することにした。と、今度は4階病棟からピッチが鳴った。
「先生、今日手術を受けた90代女性の心臓が止まっています」
「は?」
なんということ。1時間もの間に3人もの心肺停止を診なくてはならないのか。その患者さんは術後も血圧維持が難しく病気の原因からして相当厳しい状態であるとすでに説明がなされていた。術後なのですでに気管挿管されていて心臓マッサージと強心剤の指示を出した。そして先の外来患者の死後CTの結果が出たとのことで、一旦外来に戻り家族に説明をした。典型的なひどいくも膜下出血だった。これなら急な倒れ方をして呼吸停止が来たのも当然だったろう。そのことを息子氏に説明し、脳ドックとかを受けていない状態で事前にこの病気(くも膜下出血)が起きるのを予想するのは不可能だったし、この発症の仕方では助けることはほぼ無理だったと説明した。泣きながら説明を聞いていたが、原因がはっきりしたことは遺族のためにもよかった。あの時自分が早くその場にいてどうにかしていれば助かったのではなどと自らを責めるケースがままあるからで、亡くなってからの検査も相当に意味があるものなのだ。
4階に行き、術後患者の家族が集まっていたのでこれ以上の蘇生はまず無理でしょうと説明をした。その直前に私は手術記録をカルテで確認していたのだ。これは手術をしてもまず助からないケースだと。すると私の左隣にいた男性が「ですから」と語り始めた。え?!なんと信号Drだった。なんだ主治医がいるじゃないか。私を呼んだ後、すぐに主治医にも連絡したようだ。上を下への騒ぎで私はそのことを聞いていなかった。この後は主治医が説明し心肺蘇生を止めることになったようだ。すでに22時を過ぎていた。
はあ・・。過去にも一晩で3人の看取りはあった気がするが、こんなに短時間にというのは記憶がない。先の2人は死亡診断書を書いた。その後カルテの記録やなにやらで一段落してからは、医局の机にうつ伏せてしまい、翌日未明まで私は寝込んでしまったのであった。
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