数ある内視鏡手技の中で私の得意技と言えるのは大腸憩室出血の止血術だろう。一般には憩室出血の出血源を突き止めることも難しくその上で止血まで行うのは困難とされる(全国的にみても止血率は3割以下)。青雲会病院は周囲から下血患者を紹介されることも多く、私はもともと内視鏡手技はねばるタイプなので憩室の出血源を1時間でも2時間でも探して、少なくとも5割以上発見、止血までしている。
本日午後来院した初老男性下血患者も突然の下血に腹痛がないことから憩室出血を疑った。腸管洗浄下剤はあえて服用させた。その方が出血源発見率が高まるからでその間何回も下血はしてしまうが血圧や貧血が問題ないことを確かめ内視鏡をあせらなかった。で、ようやく17時になって開始することにした。この時間に開始できるのも青雲会病院ならではの柔軟性だ。大学病院だったら安静、絶食点滴で検査は明日になる可能性が高い。ただそうなると、出血が収まるのはいいが、出血源特定はかなり困難になる。
ムッちゃんNsは帰る時間が遅くなりそうで「まったくもう」という表情だった。しかし、だ。自分でも驚いたが、開始から19分後には大腸憩室の確認、出血源特定、憩室止血術、盲腸までの観察と全て終えて検査終了となったのである。ムッちゃんも喜ぶぴったし17時半の終業時間には終わったのだった。S状結腸の入り口という挿入してすぐの部位から出血していたのが早く終えられた要因だが、内視鏡室スタッフがだいぶ手慣れてきているのも大きい。憩室出血治療で20分未満というのはおそらく私の最短記録だろう。
さすがにここまでうまくいくと、そんなに高くない鼻もちょっぴり高くなる。だが、人生そんな時ほど頭を垂れるというか謙虚にならなきゃいけない、やがてそれを痛感することになる(続く)。
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