2024年2月12日月曜日

「ビヨンド・ユートピア 脱北」

3連休の最終日、カールが「夕方、映画を見に行かないか」と誘ってきた。「いいけど、何の映画?」と尋ねると、「北朝鮮からの脱北のドキュメンタリー映画」だという。「ビヨンド・ユートピア 脱北」というタイトルだそうで、全く知らなかった。しかし、YouTubeなどで脱北した女性のものをよく見ていたし、NHKのドキュメンタリーでもその手のものがあったので興味は持っていた。カールもYouTubeで脱北した北朝鮮イギリス外交官家族のエピソードを見ていてこの映画を見ようと思っていたそうだ。ただ、そんなに観客を集める映画でもないし、上映開始からすでに1ヶ月ほど経っていて鹿児島では2月15日には終了するという。場所は天文館の映画館のみで夕方の16時過ぎから1日1本しか上映されない。カールは沖縄に行った時に行こうと思っていたが叶わず、実質「今日が見る最後のチャンス」だった。
コロナ発生直前の2019年のエピソードで、再現映像を使わず、脱北の様子を手持ちカメラや支援ボランティアの映像を駆使して映画にしていた。仕方なく脱北せざるを得なかった5人家族(夫婦、祖母、娘二人)が中国の国境付近でかくまわれた時点で、脱北支援をずっと行っている韓国の牧師に「どうにか助けて屋って欲しい」と支援ボランティアから連絡が入る。ブローカーに渡す金もない5人に牧師は支援することにし、仲間らと連絡を取り、脱北を手伝う。5人は中国当局に発見されたら北朝鮮へ送り返されてしまう。そうなったらほぼ確実に死を待つのみだ。この牧師さんは韓国で指揮するのではなく、韓国当局からは「危険だから止めて欲しい」と言われるが使命感がすごくて、自ら中国、そして脱北ルートであるベトナム、ラオスまで付き添うんだ。最後、メコン川を越えてタイに入ればやっと安全である。北朝鮮と中国の国境の鴨緑江を越えただけでは全く安全ではないことがこれでもかと映画には出てくる。牧師さんの「この前はあそこで5人死んだ」とか上手く行かなかったケースの話もちょくちょく出てくる。ふう。

もう一つ、10年前に脱北した女性が北朝鮮に残した子どもが高校生になり脱北しようとするのを電話とブローカーと通じて手助けするエピソードも出てくる。しかし息子は中国に渡ってところで捕まってしまうのだ。ブローカーからお金を入金してくれればどうにか処置を軽くしてくれると言われ、「ダマされているかも」と言いつつ、泣きながらそうせざるを得ないつらい立場にある(結局息子はダメだった)。このブローカーとやらも一応味方ではあるが結構ヤバい。牧師曰く「ブローカーは脱北者を人間とは見ていません。金としか見ていない」のだ。一家5人のケースでもベトナムラオス国境を本来は3時間ちょっとで夜間越えられるはずが金をせびるためにブローカーにぐるぐる回らされ10時間も費やしてしまったりして油断も隙もないんだ。↓ジャングル越えの家族。
この他、北朝鮮という国の成り立ちと現状、そして独裁者キム一族がなぜに聖書を目の敵にするのかなども解説が入る。ふふ、金正日が生まれたエピソードなどは聖書からパクっているためそれが北朝鮮人民にバレてしまうの怖れているからというのは初めて知った。とにかく情報を遮断し、韓ドラなどこっそり見ている連中を公開裁判にし処刑するシーンを見せつける。恐怖を与えて脱北したり体制を揺るがせるような芽を摘もうというわけだ。とんでもない牢獄国家である。5人家族は観客の予想通り脱北には成功するのだが、その時のインタビューで祖母は「金正恩をどう思うか」と聞かれてもすぐには洗脳は解けないので行儀よい返答しか出来ない。娘は解けているようだったがね↓。
それは私がYouTubeで見たケースと同じだ。先に脱北した娘が呼び寄せた高齢の母も同様に最初は娘をたしなめ、北朝鮮の体制を擁護する発言をしていた。しかし韓国に住み、去年だったかな、日本にいっしょに連れてきたら「国で聞いていた日本とは何もかも違う。あれは全部ウソだったんだ」とようやく洗脳から解放された言動を取れるようになる。1ヶ月や2ヶ月では無理で数年かかることもあるそうだ。

このような悪徳宗教国家、牢獄国家を許してはいけないだろう。世界各国は今の北朝鮮体制を解体するために協力していかなくてはと強く思わされる映画だった。

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