なかなかの力作だった。アナザーストーリーはいつも3部構成で、関係者を3者の視点から描いている。今回は当然事件を検挙する側の警察、そして報道する側のサンケイ新聞、最後は被害者と当時の警視総監土田国保の家族に焦点を当てていた。
最初に起きた三菱重工爆破事件は犯人である東アジア反日武装戦線のテロ連中(彼ら彼女らは海外展開する有名企業を帝国主義的侵略の元凶として敵視していた)もあそこまで大きな爆破力とは分からないほどの威力だった。近くにいた会社の人や通りがかりの無関係な人たちなど8人がほぼ即死状態で、けが人も落ちて来たビルガラスなどもあって負傷者300人以上と一番の被害が起きた。ビル側と車道側のどちらを歩いているかで生死が別れたケースもあった。当時の警視総監は警務部長時代の3年前にお歳暮で送られてきた届け物を妻が開けた時に爆発、妻が即死した事件に遭っていた。その子どもらはその現場を目撃する羽目になる。その犯人は今も捕まっていない。今回の桐島聡は一連の爆破事件の最後のあたりに関わっただけで犯人グループの中で唯一逮捕も前科もない奴だった。しかし約50年もの間潜伏する憂き目に遭った。「犯人も被害者もどちらも幸せにはならない」という被害者のつぶやきが心に刺さる。
アナザーストーリーズを見ると、取材側のサンケイ新聞社会部の動きも凄かったことが分かる。なんと、犯人グループ逮捕のあった昭和50年5月19日朝刊に堂々と「爆破犯数人に逮捕状」とまだ捕まっていないのに一面に銘打ったのだ。そして夕刊に犯人逮捕の瞬間の写真を唯一載せ、一大スクープを飛ばしたのも同紙だった。朝日、読売、毎日には逮捕のタの字も出ていなかった。「腰を抜かしたでしょ」とかつてのサンケイ記者はにんまりとしていたね。↓犯人の住居付近の販売店では朝刊配布送らせる処置もなされたとか。
警察の公安部や警備部に深く関わり、逮捕当日は警察の尾行をしつこくやって警察側が根を上げるほどだった。いや、初めて知ることばかりで実に見応えのあるドキュメンタリー番組だった。その中で犯人の一人佐々木規夫が爆弾を作っていたアパートが出てきた。これを見て私がカールに「おい、お前のいたアパートじゃないだろうな」と尋ねた。実は、彼女が学生時代埼玉に住んでいたおんぼろアパートは、大家さんが言うには「以前、爆弾犯が住んでいたことがあってそれからは身元がきちんとしている人しか入れないようにしている」と聞いたことがあったからだ。「ううん、違うわ。でも2階に上がる階段はそっくりね」だと。それに上の犯人は地下に穴掘って作っていたがカールのアパートでは押し入れで作っていたらしい。犯人グループは「市井の人に混じって普通人として生活すべき」という方針だったそうだから不気味だった。
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