朝礼でのレクチャースピーチで検査室長の難ガターさんが「β-D-グルカン」血中濃度測定について講演をした。
β-D-グルカンとは「真菌全般の細胞質の骨格を構成する成分で、その検出によって原因菌種の特定はできないが、真菌症全般について検出可能であり、血中に長くとどまることなどから深在性真菌症のスクリ-ニング法として現在最も多く利用されている」などと解説されているが、要するにカビ菌(真菌)による感染があるかないかを採血で調べる方法ってことだ。いままで青雲会病院では院外の検査機関に送って調べてもらい、その結果が出るのに2日間はかかっていた。それが院内で今月から出来るようになり、しかも1時間ちょっとで結果が出るという。通常の細菌感染はカビ菌以外のよるものが多く、原因菌が分からないない場合(まずはそういうことが多い)は多くの菌に効くと思われる抗生剤を投与する。あるいは呼吸器か泌尿器かなど感染源の臓器が特定できればその方面に効きやすい抗生剤をセレクトして投与する。原因菌を特定してからにしない理由は、それに効く抗生剤を培養すると結果が出るのに数日以上かかるからだ。その間に患者さんは状態悪化してしまう。さらにカビ菌感染は頻度が少ない上に抗生剤に効きにくいため、真菌専用の抗生剤を使う必要があり、そんな場合β-D-グルカン値を調べて「あ、この感染は真菌症だったか」と抗真菌剤を開始するのである。だから採血して1時間で結果が出るのは現場からすると非常に有り難いのだ。
しかし、難ガターさんの説明を聞いて納得した。β-D-グルカンの測定にはリムルス試薬というのが使われているのだが、それはなんとカブトガニの血液抽出物でつくられているのだ。カブトガニの血液の色は青く大変毒々しい色をしている。人や動物の血が赤いのは鉄を含むヘモグロビンがあるためだがカブトガニは銅を含むヘモシアニンという色素をもつため青い。そんな変わった血液がカビ菌の測定に役立つなんてとっても不思議ではないか。↓が実際の測定器具で、測定前にもいくつかの手技が必要だと分かる。見た目が独特で不気味でさえあるカブトガニが医療に多大な貢献をしていると聞けば、生きとし生けるもの全てに無駄なものってあるのかとさえ思われてくる。いや、いい講演でした。
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