2022年10月26日水曜日

「腎のう胞」と書いて「ほっとけ」と読む

昼前に外来に来た中年女性患者さん、ある質問を私に浴びせ、逆に私から嘆きの答えを聞く羽目になった。
彼女はがん検診で腹部エコーを受けての結果表を持って来ていた。それを見せ、言うことが「この『腎のう胞』って放っておいて大変なことになったらと思うと・・」云々。↓にその写真。
文字にして再掲しよう。
判定「今回の所見については、精密検査や治療の必要はありません。来年も超音波検診を受けてください。」
結果所見「腎のう胞(右)<腎臓の一部に体液がたまっている袋があります。>」

きちんと文章を理解する力があれば「どうしたらいいか」「大丈夫か」と質問するのはちゃんちゃらおかしくないか。私は少々呆れて「いいですか。この部分をよーーく読んでみて下さい。精密検査や治療の必要はありませんって書いてあるでしょ。そのまんま、検査も治療も何もする必要はないんです」すると彼女は「腎臓に袋が出来ているって、放っておいたら・・ガンになって助からないってことに・・」私は少し声が大きくなって「いいですか。『腎のう胞』と書いて『ほっとけ!』と読むんです、これは」

まあ、医療関係者ならば腎のう胞が99%以上心配ない所見であることは知っていると思う。エコーをすれば中年以上の人に何十パーセントかは見つかるし、何もしなくても治療まで必要になるケースはまずない。でもエコーをすれば一応病名として記載はする。で、どう対処すべきは判定に書かれてあるとおり検査も治療も不要なのだ。なぜ、それをそのまま信じない。私は彼女に「あなたは国語が苦手だったのでは?」と尋ねた。しかし彼女は「いいえ、国語は得意でした」とぬかす。「あ、そうだ。これは数学だ。論理力が問われている」など話し、知らない病名に囚(とら)われて不安を抱く態度をたしなめた。TVショッピングなどでいかにも効きそうな〇〇〇〇イチンや〇〇〇レンが野菜の10倍入っていますと聞かされ有り難がって健康食品を購入するタイプも似たようなものだ。聞いたことのない病名が書かれていると、その説明に「心配ない」と書かれても不安を抱くのだろう。

まあ、この検診結果説明も論理的ではあるが「体液がたまっている袋があります」で終わっているのが、確かに何やら不安を煽る。一般の人は、この袋にたまった体液とやらはその後どうなるのだろう・・となってしまうんだろうな。今にして思えば、ちょいと怒りすぎた嫌いもある。次は優しく「心配ないんですよ〜」と言うようにしよう。

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