今日の医局会は医局長の信号Drが昨日の所属長会議に出られなかったため、私が司会をした。
その中で理事長が組織論の一つとして注意すべき事柄をいくつか話した。その一つに「機長症候群」というのがあった。リーダーの言うことに押し切られて議論や反論を止めてしまい、好ましくない結果を招いてしまうような場合を言い、もともと、飛行機の機長が間違った判断をしたにもかかわらず、それをサポートする副操縦士らが機長の誤った考えを翻意させることができず、結果として墜落事故に至ってしまったというケースからこの名がつけられているそうだ。
今の医療は医師一人で出来ることは限られれている。治療に際し内視鏡にしても手術にしても看護師や技師などチームで対処するのが当たり前だ。事が進むに当たって何か不都合が場面が生じた時、部下が「これは少しおかしいのでは」と疑問を持ったらとりあえずはそこを指摘するのが自然な態度だ。しかし上司たる機長、病院では医師がそれを無視したり、反論したりする場合も当然ある。それでも部下はおかしい、変だと思えばさらにそこを指摘するだろう。そこで上司は自分の考えに誤りがないかを自問自答し冷静に判断すべきである。しかし「機長症候群」に陥っている組織は機長のあるいは医師の言うことだからとそれ以上の追及を止めてしまい結果墜落、あるいは医療事故につながってしまうというのだ。
だから上司は部下に意見を言いやすい雰囲気を常日頃作っておく必要があり、それは自分の責任ひいては組織(病院)を守ることでもある。ふむふむなるほど。私の場合はどうか。内視鏡室の佳及Nsに尋ねると「こてる先生は言いやすい方です」と言ってくれる。確かに内視鏡室スタッフは私に結構意見を言ってくる。それを良しと私もしているからで、時に「検査前の鎮痙剤はブスコパンですかグルカゴンですか」という問いかけに、その患者にはブスコパン禁忌なのにわざと「ブスコパンで」と返事することもある。この場合、「ええ?違うんじゃないですか」と答えるのが正しい。「はい、分かりました」など言ったり、黙して指示に従ったら、私からカミナリが落ちることになる。これは「医師も間違った指示を出すことがある」ことを分かってもらうためだ。今じゃ「はいはい、グルカゴンですね」と鼻であしらわれるのだがネ。理事長に言われて、自分は日頃から「機長症候群」に陥らないよう気を付けていたんだと思った。
理事長の話が終わってマイクを受け取り、「理事長の『キチョウ』なお話、ありがとうございました」と言って、次の議題に移った。うん?あまりにも自然な物言いだったせいか、誰も笑わず、誰も「機長だけにか」などとツッコむこともなく、粛々と医局会は進行していったのだった。やれやれ。
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