2020年8月4日火曜日

「ミセンー未生ー」完生す

 韓ドラ「ミセンー未生ー」(2014、全20話:tvN)を見終わった。5年前に途中まで見ていながら中断したままだったのだが、この前の「マイ・ディア・ミスター」と同じキム・ウォンソク監督作品ということで、やはり見ておかねばとUーNEXTで9話あたりから見始めた。

このドラマ、一言で言えば会社ドラマなんだが、韓ドラにありがちな設定、状況がほとんどない。韓ドラって会社物っていっても、結局財閥の御曹司が出てきたり、主役同士の恋愛が必ずあったり、それに出生の秘密、お約束の交通事故、記憶喪失など出てくることが多いが、全くと言っていいほどない。その代わりに総合商社のオフィスと全く同じセットの中で俳優女優らが仕事ばかりしている。考えてみればそれが当たり前なんだがー。そんなドラマでありながら、名だたるドラマ賞を総なめにし、ケーブルTVの視聴率も当時の歴代2位まで達成し質、人気ともに獲得した名作で、当時日本のドラマ評論家が「こんなドラマが韓国で出てきたことに嫉妬すら覚える」と雑誌に書いていたのを思い出す。その後、日本でも2016年に中島裕翔主演でリメイクされた。それくらい話題になったドラマである。

このドラマを見れば会社(総合商社)での仕事というものがどんなものかよく分かる。忙しさの中に企画力、プレゼン力、交渉力、事務力、語学力そして社内の人間関係にどう対処すべきかなど主人公のチャン・グレ(イム・シワン)だけでなく、紅一点のアン・ヨンイ(カン・ソラ)、エリートのチャン・ベッキ(カン・ハヌル)、ムードメーカーのハン・ソンニュル(ピョン・ヨハン)という同期入社それぞれの悩み、先輩とのあつれきなども含め丁寧かつリアルに描かれている。私は会社勤めって思っていた以上にいろいろあって大変なんだなと心底思った。世間的には医者の仕事は大変だろうと思われていて、確かに大変でないとは言わないが、それは専門職としての大変さであり会社員ほどの総合力は必要ない(と思う)。

このドラマのもう一人の主役は中間管理職のオ・サンシク課長(のち次長;イ・ソンミン)だろう。ワーカホリックで部下思い、不正を嫌い不器用な生き方が共感を呼ぶ。イ・ソンミンは放送中は街で視聴者に「オ課長!」とよく声をかけられていたという。このドラマに出た俳優らはその後みんな主役クラスを張るようになった。みんなうまいもんねえ。

イム・シワンは時代劇「王は愛する」で主役を演じ少女時代のユナと共演した。カン・ソラは最近では「ピョン・ヒョクの恋」の主役そしてあのヒョンビンと付き合っていたが別れた。カン・ハヌルは「麗」での第8皇子役、そして2019年の最大話題作「椿の花咲く頃」でコン・ヒョジンの年下相手役でヒットを飛ばした。ピョン・ヨハンも時代劇「六龍が飛ぶ」で六龍の一人だったし、最近ではイ・ビョンホン主演の「ミスター・サンシャイン」で主要な役を務めていた。(男性3人が出た時代劇は設定が一般的な朝鮮時代ではなくその前に高麗時代というのも韓ドラトリビア的にはちょっと面白い)
↓左からピョン・ヨハン、イム・シワン、カン・ソラ、カン・ハヌルの新入社員の面々。
ただこのドラマ、女性にお勧めかというと、例えば青雲内視鏡室の佳及Nsなど「ドラマでキュンキュンしたいの」という向きには好まれないかも。それと演出、演技、脚本どれも素晴らしいが、同じ監督では「マイ・ディア・ミスター」の方が私は好みだ。また犯罪&タイムスリップ物の「シグナル」も同監督作品でこっちも面白くかつすごいドラマだった。と、いうことは、キム・ウォンソク監督、この人の作品は今後要チェックだ。人気と質の両方を満足させられる力量はただ者でないから。

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