2017年3月9日木曜日

めまいの原因は・・

昼の救急当番が不在とのことで代わりに私がめまいの中年女性というふれこみの患者を診た。単なるめまい患者なら治療もそれほど難しいことはない。点滴、安静、抗めまい剤などの投与で外来で済ませられるか入院まで必要か、判断するのはそれくらい・・と思っていた。しかしその患者背景がやや問題だった。当院初めての患者で、高齢の母親が付き添っていて「実は乳がんの治療中で来週には月1回の抗がん剤治療の予定がある」という。それも末期だと。これはどうしても患者情報が必要だ。単なるめまいではないかもしれない。

そうこうするうちに鹿児島市内の乳がん治療で知られている裸傘病院から電話があった。その患者の担当医でいろいろと現状を教えてくれ、最後に「ぜひ頭部CTを撮って欲しい」と頼まれた。そうそう、乳がんの末期なら脳転移が十分に考えられる。入院は決まったがその前にCTを撮ろう。で、撮ってみて、がーん、小脳に腫瘍があった。小脳がやられるとめまいが起きやすいのは医者の常識だ。さすが乳がんをよく診ているDrの指摘だった。脳外科のポンシンDrに相談すると造影剤を使ってMRIも撮った方がいいという。で、この後はポンシンDrの役割で、撮られたMRI画像を見て愕然、小脳には転移性腫瘍1個だけと思われたが実は30個以上の小さな腫瘍がいっぱい隠されていた。大脳にも1個の転移巣もあった。「これは・・」と画面を見つめるポンシンDr。放射線療法の一つであるγ(ガンマ)ナイフ療法も難しいという。

母親からの情報で娘は医療機関の治療の他に「玄米菜食」療法なるものにこだわっていたという。ある乳がんの人がそれを続けて13年生きたと聞いたからだとか。信じてしまうとこわい。食欲不振でももっと消化のいいものを摂ろうとせず玄米にこだわった。最近はほとんど食事が摂れない状況だったにもかかわらず玄米以外を受け付けなかったという。何かにすがりたい気持ちは分かるが頑(かたく)なになると治療の邪魔になる。

この後、数日でこの患者さんは亡くなった。独身で海外でキャリアウーマンとして充実した生活を送っていたそうだが、みんな長生きのこの時代、早死にといっていい。無念だったろう。乳がんは自分で触れて気付くことが出来る数少ないがんの一つだ。日頃からおっぱいを触る習慣を付けておこう。なんなら代わりに私が・・・おっとここでエロトークになったらせっかくのブログが台無しだ。最後の一文はなかったことにしてほしい。

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