「青ベか物語」での浦安住民の生態、特に性についてはずいぶんおおらかである。それは子どもにまで影響があって大人の機微を子どもらは熟知しからかったりもするのだ。第5章「砂と石榴」では見合い結婚した妻が布団の回りに砂をまき夫の求めを拒否する話しで、結局分かれる羽目になった。女は実家への言い訳に自分のことは棚に上げて逆に「夫婦らしいことがなく、男として役に立たない」と言い訳した。こんな噂は瞬く間に広まり、にこまっちゃくれた少年少女たちは男の店「みその」の前を通るとき声をそろえてわめくのだ。「『みその』では幟(のぼり)もおっ立たない」と。事実は違うのだがこれでこの男性には嫁の来てがなくなりその父親は嫁捜しに奔走し・・とその後の顛末が語られる。
これらの短編が30章ほどあり、ただ今半分ほど読んだだけだが面白くてまた最初から読んでもいいかなと思えるほど。書かれたのは50年ほど前で時代背景は90年も前のことだが予想以上にいい。いっしょに買った「赤ひげ診療譚」は映画を先に見ているので後回しにしているがきっとそっちも面白いだろう。今ごろ山本周五郎ですかと言う?でも私にとっては新作と変わらない。読書の楽しみがまだいっぱい残っているってことだ。
そうそう、山本周五郎といえば今から30年ほど前、麻雀仲間だった歯学部のクスゲン君を思い出す。彼は学生のくせして社会人1年目の私らと麻雀をするほど強く、それに文系の匂いがぷんぷんする面白いヤツだった。例えば「間一髪」というセリフを言うとき、語源よろしく「間、一髪」ときちんと間をおいていた。それにミス鹿屋と付き合っていてデートと麻雀の両方がかち合ったとき、麻雀を選んだためミス鹿屋が車のドアをバチンと閉め、ぷいっっと出ていったシーンなどかつてのこてる日記のネタにもなった。そのミス鹿屋を評して、「あいつ、審査員の質問に対して「趣味は読書」と言ったら『何を読んでいるのか』と質問され『山本周五郎』と答えたらそれがえらく気に入られたのよ。でも山本周五郎はオレが勧めて読んでいただけなんだ」とさも自分のおかげとも語っていた。
へえ、山本周五郎の本を読むってことはミスコンテストにも有利なのか、と読んだことのない私は素直に思った。それ以来いつかは読んでみようと思っていたのである。ずいぶんと時間がかかったものだが・・。
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