南日本新聞の書評に興味あるタイトルがあった。
「『させていただく』の使い方」(角川新書)
著者は法政大学教授の椎名美智という女性である。元々は英語学が専門ということだ。
「させていただく」という敬語を使われたある高齢男性が「失礼だ」と怒った場面を目にしたのがきっかけで「広く使われる敬語なのに時にいんぎん無礼にも感じるのが謎で調査を始めた」んだそうだ。この言い方は19世紀後半ごろから相手に許可を求める文脈で使われ始めたが、爆発的に広がったのは1990年代以降で、確かに私が学生の頃まではあまり聞いたことのない言い方だ。ちなみに私はずっと違和感があり、今まで1回も使ったことがない。著者はどんな動詞にもで付けられる簡単さと、自分が勝手にする行為でも「相手に配慮している」意味合いが込められるため人気を集めたとみているそうだ。そうそう、相手への敬意より、話し手自身の謙虚さ、丁寧さに力点が置かれているんだ。だから先の高齢男性は怒ったのかもしれないし、私も使う気になれないのか。著者は言う。「万人が平等な民主社会に合った表現ですが、相手の配慮のあまり、人間関係の距離が遠くなりすぎると感じます」そして、敬語には頻繁に使われると定型化し、敬意がすり減る「敬意漸減の法則」があるため、より丁寧な言い方を探し新たな表現が登場するんだとか。恐ろしいことに最近は「させていただいてもよろしいでしょうか」とか「させていただいてございます」なる言い回しが聞かれだしているという。
いやはや。
0 件のコメント:
コメントを投稿