おまけに救急搬入の依頼もあって本来ならピッピDrの担当枠だったんだけど、彼も亡くなってしまっているからね・・みんなで手分けして救急に当たっている。運転免許場で気分悪くなった高校生を診察したのはいいとして、しばらくして連絡あったのが、搬送する人の病状も年齢も性別も知らされない状況での「点滴の許可が欲しい」で、これには少し困った。看護師と代わって詳しく聞いてみると「刃物を自分で刺した人で・・すでにショック状態です」だって。即「点滴OK!」と返事をした。で「すでにドクターヘリを要請しています」だと。そりゃそうなるわ。いやはや。
夕方にはどうにかヒマな時間帯になった。金曜日だけ勤務の循環器内科のアミヤンDrが挨拶に来て、色々話した中に「この間、別の救急病院当直でさ、すでに心肺停止の30代女性が運ばれて来たのよ」と生々しいケースがあった。運転中におそらく気分不良となって道路脇に駐車しそのまま意識不明になっていたそうだ。結局、その人は助からず、CTを撮ってみたらかなりの脳出血があったそうだ。生前の情報では20才くらいから高血圧を指摘されてはいたが特に治療は受けていなかった、と。
そこでアミヤンDrが力説する。「循環器学会などで70代の高血圧をどう対処するかなんて討論しているけど、オレに言わせりゃ、30代40代の若い高血圧の連中をいかに治療していくかが大事なんじゃないかな」「70代だとすでに動脈硬化もあって治療の甲斐があんましない。しかし若い連中はきちんと治療すれば20年後の高血圧合併症を防げるんだよ」と。確かに、私も同意する。人間ドックなどで指摘を受けて診察に来るその世代に、私も降圧薬内服を勧め「高血圧、治療するのは今でしょ」と林先生ばりに強調する。その世代の人たちは高血圧があっても基本、症状はない。しかし「症状ない」イコール「無治療でいい」は明らかに間違いだ。放置すれば気づかぬうちに病魔が巣くうのだ。
アミヤンDrは「高血圧の薬は『治る』薬ではない、あれは『保険』なんだ」と説明しているそうだ。なるほど。飲み続けた人とそうしなかった人では10年後20年後の合併症率、死亡率に明らかに差が出る。だから最初の診察で30分は掛けて内服を含めた治療が必要であることを丁寧に説明するんだとか。いっしょにたつやましたDrも聞いていたが、専門家の話は役に立つな。「で、アミヤン先生自身は高血圧とかないの?」と尋ねると「おれはさー、この年になっても血圧は110くらいなの。だから薬飲んだことないのよ」だって。へー、60代半ばなのに、見た目は役者の伊武雅刀みたくギラついた雰囲気もあるのに意外だ。血圧高かったら例え若者であっても薬を飲むことに躊躇しない。先の30代女性もきちんと治療を受けていたらそんなに若くして亡くなることもなったろう。その無念さが分かるゆえ、専門家は血圧の治療の大事さを強調して止まないのであった。
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