これで無事に済んだが私は今まで部屋に入った蜘蛛は叩き殺すか踏みつぶすか殺虫剤でやっつけていた。しかしアミヤンDrが言うように「蜘蛛は殺すな」との俗言は私も聞いたことがある。「蜘蛛を殺すと罰が当たる」とか「朝の蜘蛛は殺すな、夜の蜘蛛は殺せ」とか。医局でキブンDrにも尋ねると「私も殺しませんねえ」とのこと。理由を聞くと「おばあさんからの言い伝えなので」という。芥川龍之介の短編「蜘蛛の糸」でも悪党カンダタは蜘蛛を殺さなかった。この言い伝えはそこそこに理由があって特に朝の蜘蛛は家の中の害虫を補食してくれるからという。
でも私はやはり殺す。言い伝えも知っているが理由は単純、とても気持ち悪いからだ。そんなのが目の前でうろちょろされては落ち着かない。逃がしたらまたやって来そう。家の害虫は?それも私が殺す。蜘蛛に頼ることはしない。でもそんな私でも「蜘蛛の糸」でお釈迦様が蜘蛛を殺さなかったカンダタを認めたようにちょっぴり心の痛みは感じてはいる。幼い頃に読んだ小説や聞いた言い伝えは成長しても影響するもの、なかなかに侮れないわ。
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