でも、新聞を見てこんな人もやってきた。膵臓に特殊な嚢胞ができる疾患があり、その形態や大きさから「現時点では治療は必要ないし、せめて半年後に再検するくらいでよい」と説明したばかりなのに「南九州病院で新しい放射線治療が出来るって聞いて、自分のが当てはまるのではないか、出来たら紹介状を書いてくれないか」と急かすように言ってきたのだ。「はあ・・」とため息をついて、私はきちんと説明をした。まずは結論からだ。「紹介は出来ないしする必要もないです」なぜなら「あなたの病気はそもそも癌ではない。いや、癌になる可能性は少しあるとは言ったけれど、放射線治療は基本、癌になった病変に照射して治療するもので癌でもないのに放射線治療をすることはないんです」
まあ不安に思い思いすぎてのことなんだろう。もう一度心配ないことを強調して説明し、それでも10分以上お話ししてようやく引き下がったくれた。ちょっぴり診療迷惑でもあるが、まだこんなタイプの患者さんの方がましだ、と思うのは、症状があっても心配はしてもなかなか病院に来ない一群の人たちがいるからだ。10月25日に日記に書いた60代の女性がその典型で、病院受診や健診を全くと言っていいほど受けたことがない人で、あまりの病状の進み具合に「完治は全く望めない」と書いた。その人は入院継続より在宅での療養を望み、近隣のクリニックの訪問診療で人生の最後を過ごした。今日、昨日亡くなったとの情報を受けた。治る見込みのない残りの時間を病院ではなく自宅で過ごせたことは良かったと私は思った。
その人の息子さんが近々胃カメラを受けに来るとの情報も得た。「母がああでしたから」だそうだ。母は亡くなっても残した教訓は息子にはしかと伝わったようだ。
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