2023年3月7日火曜日

「64歳になったら」

朝の医局会で泌尿器科のミエマドDrがレクチャーをした。お題は「尿路結石症診断ガイライン 疫学と診断」というものだった。専門外の我々にまさに教育的講演をしてくれたわけだ。専門外といっても尿管結石症は当直をしていればしょっちゅうお目に掛かる疾患だ。鎮痛法や排石をしないケースは泌尿器科紹介へといった基本的なことは自分でもだいたい把握出来ていた。

その中でちょっと面白い指摘が、尿管結石の年間罹患率のグラフで↓10年ごとの調査でずっと増加傾向だったのに2005年から2015年までは罹患率が横ばいになった。これはどういうことか。その考察が面白かったのだ。
まず普通に考えられるのは食生活の欧米化で確かにそういう側面はあるらしい。しかし近いこの10年が横ばいというのは食生活が改善もしくは欧米化の停滞と考えるにはちょっと説明出来ない。ミエマド先生の考えでは、これは「CT検査装置の普及が一段落したから」だ。ほう。そもそも尿管結石の診断に一番役立つのは腹部CTである。これは日常診療で尿管結石を診断する私も実感する。検尿やレントゲン(泌尿器科ではKUBという)、腹部エコーでも可能だがはっきりしないことも多く、それがCTだとずっとクリアに診断できるのだ。その普及が罹患率の増加につながりそして横ばいになったと、ある意味拍子抜けする理由だ。CTは同じように思える腹部エコーとはかなりの診断有効率の違いがある↓。しかも手技は尿路造影などと比べ超簡単だ。

レクチャーが終わって何か質問は?に私は手を挙げた。「夜間に発症するケースが多いようだが・・」と。しかし、ミエマドDrは「調べると発症時刻の偏りは特にない」とのこと。そっかー。私たちは夜間や夜明けに尿管結石で起こされ急患としてみる場合が多いからそう感じてしまっていたのだ。

話が終わって、一同解散したが、私はもう一つ冗談めいた質問も考えていた。それは「私は来年尿管結石を発症する予定だがこれを防ぐには・・」というもの。はあ?と言いたくなる質問じゃないか。でも、そこでこう言うつもりだった。

「私が初めて尿管結石を発症したのは24歳の時。そしてぴったし20年後の44歳の時にも発症した。その時思った。20年後の来年64歳になったら(When I'm Sixty-Four)・・と」そう、ビートルズのポール・マッカートニーは「64歳になったらそれでも僕を必要としてくれるかい?」なんて甘い言葉を歌にしたが、私は「64歳になったら尿管結石を覚悟しなくちゃ」だったのだ。ケケ。

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