2017年5月26日金曜日

ところで先生はこてる先生ですか

いや、普通の忙しさの当直かと思っていたら未明からえらい忙しい当直になった。午前3時、4時に起こされた。4時は病棟患者の急変ですでに心肺停止で蘇生に反応せず。家族に至急連絡するも1時間半ほどして来院され死亡宣告した。鹿児島市内から家族関係者一同そろってのため遅れたようだ。そこから1時間ほど仮眠できたか・・よく覚えていない。だいたい明け方は救急車がよく来る時間帯だ。腹痛の女性に、包丁で指を切った主婦、指を脱臼した男性、そして早朝自転車で通学しようとして意識不明で倒れ運ばれた高校生など・・。

意識不明の高校生は当初てんかん発作かと思われた。1週間前にも同じような症状で脳外科で検査したばかりだったからだ。しかしそれ以上におかしかったのはモニターされていた酸素飽和度で正常域は97ー98%なのに80%台からなかなか上がってこない。それに喉の違和感を訴え血痰のようなものも吐く。もしや落車時に肺野を損傷したかと胸部CTを撮って驚いた。両肺野に炎症所見が多発しこのせいで低酸素血症を来していた。となればこれまでの意識消失も納得がいく。不思議なのはそれほど発熱もないことで普通の肺炎らしくはない。もしや結核?と誰もが疑いをもった。しかし今度はなかなか排痰できない。可愛いんだ理事長も所見をみて結核の他いろいろ肺疾患を挙げて「入院が必要だな」とのこと。もちろんこのまま帰すわけにはいかない。なかなか喀痰検査が進まない中、このまま青雲会病院で診療を続けるのは難しいのではと思っていたところ、理事長も「ここはサンキュー病院に頼むのがいいのでは」と言ってくれ私も同意し、本人と母親に打診すると「ここかサンキューならどちらでも」とのことでサンキュー病院に直接私が連絡した。

呼吸器担当Drに事情を話すと、「分かりました」と一旦受け入れるかどうか他のスタッフと検討するとのこと。だが、しばらくしてかかってきた返事では意識障害もあるので呼吸器以外も診療できる他の医療施設がいいのではないかとのことだった。がっくり。と、なれば鹿児島市内のA病院かB病院か・・。しかしどうみても呼吸器疾患だろうとの思いがあり青雲で私が診るしかないかと考え、理事長に伝えに行くと「なに?うーん、これはセイジ院長に一言言わねばならんな」とサンキュー病院に直接電話を掛け始めた。あららと思う間もなく、「向こうの院長に代わったからこてる先生からさっきの患者の件を話してくれ」と受話器を渡され、また私が話すことに。一度断られたのを蒸し返すようで非常に気まずかったが仕方ない。セイジ院長は事情をよく聞いてくれスタッフに再度話すと約束してくれた。いやはや、こんなこと可愛いんだ理事長でなきゃとても出来やしないよ。

その後、呼吸器スタッフから連絡があり今度は受け入れるとのことでまさにトップダウンでことが運んだ。でも、私も患者も家族もこれが一番いい選択だった。症状はいろいろあれどあの胸部CT所見をみればこの若者が呼吸器疾患を患っているのは一目瞭然で専門医がいる施設での治療がベストのはずだ。情報提供書やCTのCD-R記録など大急ぎで準備し再度救急車で転送となった。すでに時刻は昼の12時を過ぎていた。最初に運ばれてから5時間は経っていた。

このあと外来他あり、夕方になってさすがに睡魔が襲い内視鏡室の机でうつぶすこと約30分、これで元気が戻った。夜の串木野トリオリーグ参加も無事行けたのだった。そこで12連続ストライクを出した話題は明日書くとして、昼過ぎに驚きの電話があった。それはサンキュー病院のセイジ院長からで、転送になった若者の件についてだった。可愛いんだ理事長へつないでとのことだったようだが、あいにく理事長はすでに病院不在で、代わりに私につながったのだ。

曰く「あれは呼吸器疾患の患者で間違いないでした。当院は呼吸器専門を看板を掲げながら患者の診察をすることなく断るなど『しつけが悪く』誠に済みませんでした。今後こういうことがないように気をつけていきます」と。びっくりだ。そこまで言われるとはかえってこちらが恐縮した。4月にセイジ院長は可愛いんだ理事長と会っていて「連絡を聞いただけで断ることはせずまず患者を診てから判断すべき」といつもの主張を聞かされていたそうだ。今回はまさにそのケースだったとのこと。それにしてもここまで正直に話されるとは・・。でも驚いたのはそれだけはなかった。

セイジ院長は最後にこうも言ったのだ。「ところで先生は『こてる先生ですか』」と。は?「あ、はい、そうです」「ボウリングが得意な・・」「え、まあそうです(パーフェクトも出しましたけど)」「ああ、私は第3内科出身でして大学時代に納先生から聞いていましてネ」「ああ、そうでしたか(^^;」「今後もよろしくお願いします」いやー、冷や汗かいたっす。

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