朝、病棟の回診をしていると、廊下でリハビリスタッフの地下畜生さんに声を掛けられた。「こてる先生、先生のうちにはネコがいるんですか」「うん、いるよ」「名前はカールって言うんですか」「は?いいや、ゲンちゃんだよ。カールはうちの嫁さんの名前だ」「え、でもギボヒサコさんがカールって言ってましたヨ」「えー、カールはヒサコの娘の名前だよ。きっと娘の名前を言ったに違いないさー」「えー、でも別のイサソーシ君にもネコの名前はカールだって言ってましたよ」「なになにぃ」そんなやり取りがあって、私はさっそく病室に行き、確かめることにした。
「ギボヒサコさん、うちにネコがいますね」「ええ」「ネコのな・ま・えはなんですか?」
「カール」
「え?ネコですよ、もう1回」
「カールじゃないかねぇ」
「はぁ・・」
いかん、カールはとうとうネコにされてしまった。信じてもらえるか分からないので動画にも撮っておいた。LINEで「お前はネコにされた」と送ったところ「うわーっ!」とスタンプが返ってきた。
ううむ、脳梗塞でちいとばかし認知も進んだか。動画をカールに見せると「そうかもね・・」と声を落としていた。「人はこうして衰えるのね」とも。今はコロナでカールも病棟見舞いがなかなか出来ないゆえにもどかしい。ただ、ギボヒサコは麻痺がないのは幸いでリハビリをしてどうにか退院にまではこぎつけよう。それまでにネコの名前はゲンちゃんと正しておこうゾ。
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