鹿児島県医師会報2月号が届いていた。
巻頭の「時言時論」は医師会理事である久米浩太先生が寄稿されていてタイトルが「今、HPVワクチンを考える」で、おおと思い一気に読んでみた。
HPVとは子宮頸がんワクチンのことである。私は専門外ではあるがこのワクチンの問題については残念さと憤りの二つの感情がある。久米先生も書いているが、「日本では2013年4月から予防接種法に基づき定期接種化されたが、接種後の広範な疼痛や運動障がいなどの多様な症状が報告され、マスコミも副作用として大々的に報道、わずか2ヶ月後の2013年6月には積極的勧奨の一時差し控えが発表された」のである。そしてその後、我が国では子宮頸がんワクチン接種がほとんど行われていない悲惨な状況にあるのだ。ワクチン接種がされていないのはなんと世界で日本だけというくらいの状況で、それがきちんとエビデンスのあることならいざ知らず、偏向的な思考、報道のせいで、本来受けられるべき若い女性らが近い将来子宮頚癌の危機にさらされているのだ。
日本では主要5大がんの肝臓・胃・大腸・肺・乳がんが低下または増加傾向が止まってきているのに、子宮頸がんの死亡率の増加が加速しているそうだ。一方、多くの先進国では子宮頸がんの原因であるHPV16・18型の感染率が劇的に減少してきていて、実際に子宮頸がんの前がん病変である異形成や上皮内癌の発生が有意に低下していると報告されている。ワクチン接種の進んでいるオーストラリアではすでに2020年には稀ながんになって、2034年には子宮頸がんで亡くなる人はほぼいなくなるとの報告もあるそうだ。
日本では2002年生まれ以降の女子の接種率は1%未満というひどさで、WHOがHPVワクチンを国の接種プログラムとして導入すべきだと繰り返し推奨し、安全性も極めて安全であるとの見解を発表しているのにも関わらず、偏向マスコミと一部偏狭な考えを持つ人たちのせいで見直しがなされていない。久米先生も「HPVワクチンの有効性、安全性について最近知見、世界の動向をみる時、日本でも早期の積極的推奨を再開すべきと思うが今のところそのような動きはないようだ」と懸念を述べている。
まったくひどい話だし、残念だし、恥ずかしくもある。これで日本は先進国といえるのか。マスコミもデータを見ればどっちが正しいかははっきりと理解出来るはずだし、厚労省も及び腰で本気で日本人女性の健康を守る気があるのかと疑いたくなる。2002年生まれ以降の女性らは不幸である。毎年3000人弱が亡くなってしまう状況に対し、これだけ有効ながん対策はそうそうはないのにいったい何をやっている。
インフルエンザワクチンでも同じ筋肉注射だし若い女性のうちには「接種後の広範な疼痛や運動障がい」を訴える人は必ず出てくる。それならば、逆に子宮頸がんワクチンのせいではないとの証拠にもなろう。私が診た若い女性で頸がんワクチンの副反応があったという女性に確かめたら、打った「直後に」ひどい症状があったという。ほほう、ならばそれってワクチンの成分で起きたものではない可能性が高い。アナフィラキシーショックならもう少しあと(早くても数分後)に症状が出てくるはずだ。先の尖ったものが筋肉を刺激したせいだろうとだいたいは想像がつく。その後、その女性はどうもなく過ごしている。
日本のワクチン行政、諸問題でこれほどひどい状況を一刻も早く改善したいものだ。
娘2人とも自費で接種しました。当時はまだまだ一般的ではなく、2回接種で何万円と言う費用でした。その後、定期接種になり、直ぐに副作用を騒がれたりして不安になりましたが、先生のこのお話で、やはりあの時の判断は正しかったと自信を持てました。ありがとうございました。
返信削除コメントありがとうございます。私にも娘がいれば絶対に受けさせていました。接種費用が万の単位で必要になるというのも大変な負担で、その後接種が進まない理由かもしれませんが、後々のことを考えれば接種するのが正解と思います(子宮頸がんになって手術、抗がん剤など受けることを想像すればみんな分かるはずです)。
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