人間ドックをたまに高齢の人も利用するが今日は胃カメラで珍しい症例に出くわした。十二指腸までスコープを進めると下行脚に茶色の細く真っ直ぐな異物があった。
「なんだこりゃ」
そう思って生検鉗子でつかみ取りだそうとしたのだが、固くてひっかかりうまくいかない。それでも異物は取り出さねばと引っ張ると異物先端の粘膜から出血し始めた。こりゃいかんと経口内視鏡のフード付きに切り替えて再度挿入した。
把持鉗子に代えて異物をつかみ直し粘膜を刺激しないようにしてそっと十二指腸から引き出した。幸い十二指腸粘膜の出血は最初だけであとは収まってくれた。
で、取り出すまでいったいこの異物がなにかさっぱり分からなかったが、口から出てきたものは一目瞭然、なんと長さ6.5cm太さ2mmの爪楊枝だった。
ご本人には全く覚えがないとのこと。しかし何かの料理(揚げ物、ロールキャベツその他)に使われた爪楊枝をそれごと飲み込んだとした考えられない。それが十二指腸に入ってぴたっと管腔に嵌まってしまったというわけだ。「そういえば最近胃のあたりが重苦しく感じていた」という。この状態で長期間経てば壊死や穿孔の危険もあった。粘膜の状態から最近嵌まったばかりのようでたまたま人間ドックが組まれたのはラッキーだった。
内視鏡を始めて30年、まだまだ経験したことないような症例に出くわすもんだねぇ。
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