「沈まぬ太陽」は第3巻まで読み終えた。「御巣鷹山篇」なので遺族がらみのシーンが多くつらい場面もある。小説だがノンフィクションの場面もあり、中でも墜落間際までメモに遺書を書き連ねた大阪商船三井船舶神戸支店長の河口博次氏52才の遺体発見のシーンには涙が出た。息子の津慶(つよし)さんが遺体確認後、遺書を発見し号泣する場面だ(文庫本162−163P)。一時一句実際の遺書のまま載せてあった。いや、当時の新聞で同じ内容は見聞きしていたのだがその時は特に涙することはなかった。今となっては自分がその男性と同年代で父親という共通の立場にあるゆえか。
マリコ
津慶
知代子
どうか仲良く がんばって
ママをたすけて下さい
パパは本当に残念だ
きっと助かるまい
原因は分らない
今五分たった
もう飛行機には乗りたくない
どうか神様 たすけて下さい
きのうみんなと 食事をしたのは
最后とは
何か機内で 爆発したような形で
煙が出て 降下しだした
どこえどうなるのか
津慶しっかりた(の)んだぞ
ママ こんな事になるとは残念だ
さようなら
子供達の事をよろしくたのむ
今六時半だ
飛行機は まわりながら
急速に降下中だ
本当に今迄は 幸せな人生だった
と感謝している
今年、津慶氏は父と同じ52才になるそうである。小説では主人公が津慶さんに付き添っていることになっている。しかしモデルとなった小倉寛太郎氏はこの時日本にはいないのでそこは創作だ。しかし遺族の一部にこうして実名を挙げて書いているためなおさら実感させられる。普通、遺書はいつになるか分からないが書いておく場合や自殺を決意して書く場合はあるが、数分後、もしくは十数分後にやむなく死ぬことを覚悟して書くケースはまずない。今自分が同じような事態に遭遇したらどんなことを書くのか、いや書けるのか。妻や子どもたちにこれだけはというメッセージは常日頃考えておかねばと思う。
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