2024年4月18日木曜日

その名は「心気症」

前日、内科外来を受診した60歳代前半の男性が胃カメラに来ていた。ダヒロDrが胃カメラの指示を出しており、注意書きで「かなり心配症な方で内視鏡実施時には鎮静剤を使って上げて下さい。そして、結果説明の時は内視鏡画像は見せないで下さい」とあった。 鎮静剤希望する人は多いが画像を見せるなとは、これはまた・・。画像を見せて欲しい出来ればプリントにして欲しいなど希望する人は多いのに、見たくないという人は初めてだった。様子をうかがうと少し痩せて眼鏡をかけ確かに神経質そうな男性だった。指示通り鎮静剤の注射をし検査をした。胃カメラは初めてとのことだった。

結果は全くの正常で逆流性食道炎も胃潰瘍もピロリ菌感染もなかった。そもそもなんで胃カメラの指示が出たのかすらよく分からない。患者が覚醒して結果説明の時に尋ねてみた。妻と同席した患者が言うことには「この辺りが(と言って胃のあたりを押さえ)1、2秒痛くなって消えるんですよ」「1、2秒ですか」「はいそうです」と。そこで私は言った。

「1、2秒で収まる胃の痛みは痛みとは言いません。気のせいと言います」

さらに「薬局で買ったガスター10もあんまし良くないと聞いて飲むのを止めました」と。私はははあと思って「ガスターはいい薬ですよ。でも有名ゆえに薬の副作用を気にしすぎる偏った考えの人たちがよくやり玉にあげるんです」とも説明した。このあたりの問題点はこてる日記でもよく読まれている記事に詳しく書いているのでここでは敢えて言わない(2016年6月1日「週刊現代」のいうとおりにしたらぁ〜→https://koteru-nikki-2015.blogspot.com/2016/06/blog-post.html

そしてその人は説明をするたびに大きなスケッチブックのようなものにメモ書きしようとしていた。何を書いているのかというと、毎日の内服の結果や症状の記載などで、やたら自分の病気というか症状が気になるタイプのようだった。妻によると近くの愛乱病院に定期的に通っているらしい。私はカルテにこう書いた。

「心気症」

心気症とは医学的な診察や検査では明らかな器質的身体疾患がないにもかかわらず、ちょっとした身体的不調に対して自分が重篤な病気にかかる(かかっている)のではないかと恐れたり、既に重篤な病気にかかってしまっているという強い思い込み(専門用語で観念)にとらわれる精神疾患の一つだ。で、試しに「ほら、内視鏡画像はこんなにきれいなんですよ」と見ることを勧めたが「いえいえ」と手を振り、とんでもないという態度だった。まあ無理に見せることもない。ともかくもどこも心配することはないので最後にこう書いて締めくくった。

「処方なし」

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