昨日の午後外来受診した80歳代男性は、施設の職員に「肌が黄色い」と言われ、家族に付き添われて来た。すぐに採血、CTを実施して、私の出した診断は肝門部胆管癌による閉塞性黄疸。即、入院となり、今日減黄のための内視鏡処置を受けることになった。癌を治す治療は大がかりな手術になるし、高年齢とあって家族の積極的治療の希望もなく、「せめて黄疸をなくす処置をすればしばらくは自宅や施設で過ごせるから」という私の提案をすんなり受け入れてくれた。今週は火曜日に総胆管結石の排石術もやったばかりで胆管治療づいている。まあ下血治療づいたり、癌発見づいたり、なにかとその週に特定の病気が集まるのはよくあることだ。
内視鏡の時間は午後の早くても15時、遅くても16時ごろと予定していた。しかしー。患者さんはこの人ばかりではないのだ。病棟から「急変です」ときてすぐに上がって蘇生処置をする羽目になった。奮闘約2時間、結局ダメだった。途中「予定のERCPは今日は中止か・・」とも思っていた。減黄のための金属ステントを留置するため業者さんにも来てもらっていたが、検査する私がいなければどうしようもない。こういう時、2年前に急死したピッピDrがいないのが痛い。そもそもこの手の内視鏡処置はほとんど全て彼に任せていたのだ。しかし17時過ぎにはどうにか開始できるとふみ、内視鏡主任の佳及Nsに準備するよう指示を出した。
ERCP用の内視鏡を入れて十二指腸乳頭を観察すると若干総胆管への挿入が難しそうな感じだった。やな予感どおり、しばらくカニュレーションが出来ない時間帯が続いた。ERCPって総胆管にカニューレが入る否かが勝負の分かれ目で、これは大腸憩室出血の出血源憩室を発見出来るか否かと似ている。15分か20分くらい経ったろうか。ひとまず膵管にガイドワイヤーが入った。これで少し希望が持てる。ステントの業者もほっとした様子だった。このガイドワイヤーを残し、そこを起点に総胆管へのカニュレーションを試みると今度はすんなり入れることが出来た。いやー、これでどうにかなるぞ。元気が出てくる。
この後はほぼ滞りなく進んだ。ガイドワイヤーを左右の肝内胆管に留置し、まず左の肝内胆管に金属ステントを留置し、今度はステントの隙間からガイドワイヤーを右肝内胆管に挿入してステントを入れ込む。こうして左右の肝内胆管から胆汁がスムーズに総胆管へそして十二指腸へ流れていける。この患者さんの画像は載せられないが、ネットで他院が披露しているほぼ同じ画像があったので↓に掲載する(湘南消化器病センター提供)。
実はこのような肝門部癌の両側肝内胆管の金属ステントによるドレナージ術を私が行うのは初めてのことだった。いや、総胆管の単管のドレナージはやったことはあるし、ピッピDrがやっているのを遠くから見たことはあった。でも彼がいない今、私がやるっきゃないべ。そういう切羽詰まった状況に追い込まれるとなんとかやれるもんだ。ドクターコトーも離島にいて患者さんを本土に送れない状況ならなんとか島内で済ませられるようなるって言っていたような・・。後で医療器械社員の会いたかさんから「こてる先生、60歳代でERCPをばんばんやっている先生って(鹿児島には)もうあんまりいないですよ」と言われた。え、そう?「垂水のカピバラDrも(他院に)送るって言ってますし、内金Drも大御所のジュンセイDrもほとんどやってませんし、やっているのは年齢の近い時間任せDr(50歳代後半)くらいじゃないですかねぇ」だと。ううむ、私と同期のDrらでもまだやっている人はいるかと思うが、確かに還暦過ぎれば第一線をだいたい退くからねぇ。私もそうしてピッピDrに任せていたんだった。
この患者さんは翌日には黄疸の指数(総ビリルビン)がほぼ正常近くまで下がっていた。来週には退院も出来そう。説明を受け、患者の娘さんも喜んでいる様子だった。ほっとけば重症化が見えている人が1週間もしないで家に帰れる。こうした結果は内視鏡をするドクターの醍醐味でもある。まだまだこれを止めるわけにはいかないねぇ。
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