2週間ほど前から背中が痛いという50歳代女性が外来に来ていた。
事前にバイタルを測定した際に、血圧が異常に高いと報告があった。それで新血管系の病気なのでは・・と予想しながら診察に臨んだ。病院受診はあまりしたことはなく常用薬もないとのことで、問診と上半身の診察を行い、採血、心電図、胸部レントゲン、CTを指示した。この時、背部を見るためにブラジャーを少し引っ張って湿疹などないかは確認はした。帯状疱疹の場合もあるからだ。聴診はしたものの、後から考えるとブラも取っ払って視診、触診をするべきであったか・・。
血圧が230以上と知り、一番心配したのは高血圧を放置しての胸部大動脈瘤だった。一般の人たちは血圧が高いと頭痛など起きると思っているようだが、基本は無症状だ。だから脳出血や大動脈瘤解離が起きて初めて「(血圧を)下げておけばよかった」と悔やむのである。他の患者さんの診察をしつつこの女性の検査結果を待った。
放射線科から院内電話があった。「先生、一目瞭然ですよ」というので、「うわ、やはり大動脈瘤があったかっ」と思ってCT画像を見た。じーっ・・。「あれ?動脈瘤なんてないぞ。何が一目瞭然なんだ?」・・あれ、なんだこりゃ。胸腔内ばかり見ていたが異常所見は左の乳房にあった。6、7cm大の腫瘤がどっかとあった。紛れもなく進行した乳癌だ。↓はこの人の画像ではなくネットから拝借したものだが、腫瘤の位置はほぼ同じでより大きいと言えば想像してもらえるだろう。
改めて診察で乳房を見るとそれこそ一目瞭然だった。触ると硬く、熱感すらあった。本人は「以前からあるのでそんなに気にしてはいなかった」と言う。どうものんびり屋さんだなとは思ったが、心血管系は今のところ問題なく、外科への診察を依頼した。いやー、予断をするのはいいとしても診療では決して決めつけてはならぬ、予想もつかないことがあるんだと改めて思ったことだった。
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