このところ韓ドラがすっかりご無沙汰だ。さすがに1年半ものマイ韓ドラブームも昨年末くらいから陰りを見せ始め、今年に入ってちょっとした偶然から「悪霊狩猟団カウンターズ」を一気見はしたがその後は見る気力が湧かず、昨年4月に2話まで見ていた2019年の話題作「SKYキャッスル」を2月にまた見始めたものの数話で停滞した。一つはネット麻雀が好調で久しぶりに八段に昇段しそっちに気持ちが行っていたこともある。その八段も4月10日にとうとう降段、七段になってしまってその頃からまた「SKYキャッスル」の続きを見始めた。
先週の12話くらいから面白くなり始め(ただし本来20話を日本版は全36話で1話が40分未満と短めに編集されている)、今日は25話まで来て、なんと予想もしなかった展開になり全く目が離せなくなった。このドラマはSKYキャッスルと呼ばれる上級住宅街に住む受験生を持つ家族たちの葛藤を描いたドラマで、第1話は何と1%台の視聴率だったものが最終的には23.8%にまで伸び、当時のケーブルTV史上の最高視聴率を更新したことでも有名だ。韓国は日本以上に学歴社会だ。有名大学に入ることが大事で少なくとも大学を出ていないとまともな人扱いされない。韓国学生の現役の大学・短大への進学率は72.5%で、単純比較は出来ないが日本の58.6%よりずっと高い。ずっと以前に見たドラマで主人公の女性が30才近いのに予備校から大学に入ろうとする境遇だったのには驚いたし、現実の韓ドラ俳優、女優もほとんどが大学出で日本みたいに高卒の芸能人でも誰も気にしないといった風潮はない。韓国俳優らのプロフィールをチェックすれば「中央大学演劇映画科」「韓国芸術総合学校」「東国大学」「建国大学」「成均館大学」「漢陽大学」などぞろぞろ出てくるはず。さすがに韓国の東大、ソウル大学出身は数は少ないがスター女優のキム・テヒはそれが売りで私から見たら実力以上に評価されている気がする。そもそもSKYキャッスルのSKYとはソウルの三大名門大学「S:ソウル大学」「K:高麗(コリョ)大学」「Y:延世(ヨンセ)大学」の頭文字から取られているくらいだ。なお、高麗は早稲田と延世は慶応と姉妹校の関係にある。
ドラマを見ていると、受験生の親たちがもう滑稽なくらいに難関名門大学への合格にこだわる。ある娘はアメリカのハーバード大学に留学したことで父親は鼻高々だった。その娘が一時帰国し、父親は知り合い住民を集めてパーティを開き、「娘はオバマ元大統領の娘とボランティアでいっしょだった」などと自慢をする。しかしー。実は高校時代から渡米していた娘は勉強に付いていけず学生のふりをして授業に出たり図書館に出入りしそれが大学にばれ弁償を求められる状況で逃げ帰って来ていたのだ。それが発覚すると父親は「そんな娘は私の娘ではない」と人扱いしなくなる。そんな親だと知っていたからこそウソついてまでもハーバード大生のふりをしていた子どもの苦悩を父親は分かりはしないのだった。
彼の国では学問が立身出世の道具になっている。日本も似たような側面はあるがまだましだ。その一因となった「科挙」制度の弊害をWikipediaでは分かりやすく解説していた。引用しよう。
科挙制度の確立により、中国は世界に類をみない教育国家であり続けた。科挙に合格しさえすれば、だれでも政権の中枢に到達できるため、当時の中国教育の中心は科挙のためのものとなり、儒学以外の学問への興味は失われがちだった。また、科挙に合格するための教育が主流であった中国では、学習者はある程度の地位や財力を持つ者に限られた。さらに、科挙の本質は文化的支配体制の確立であったため、権威は権力と密接し、論争的・創造的学問は排除された。
それに比して、江戸期の日本では、公的試験はあったものの、科挙のような選抜の意味合いがなかったため、学問とは官吏になるためのものではなく、あくまで個人の教養のためのものだった。官立学校が確立していた中国と違い、学校はほとんどが私塾であり、そのため多様な学問が取り入れられ、新しい学問の導入も積極的かつ容易であった。学問が趣味的で、出世の絶対的な道具でなかった日本では年齢や階級にかかわらず学習者が一定の階層に固定せず、庶民にまで広がり、世界的にも高い識字率が実現した。また、朱子学を批判した荻生徂徠の徂徠学の影響で、さまざまな研究が好まれ、支配階級である武士は実用性・合理性のある学問を尊重したため、西洋学問の導入にも理解があった。
日本が幕末から開国し一気に近代化への道を歩んだのに対し、儒教社会でかつ「科挙」を導入していた中国、朝鮮は近代化が遅れしまいには植民地化されるまでになった。一国の教育制度は間違うと亡国の恐れさえある。とっても大事なことだ。歴史をみてもドラマをみてもそんな怖さを教えてくれる。
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