このところずっと忙しい。なぜか私の受け持ち入院患者が増えて20名を越えているからだ。天候もよく寒さも和らいでいるというのに不思議だが、これは当直がたまたま今月多く入っているせいもあるだろう。そして今夜も当直。疲れているので医局ソファでソフトバンク対楽天を見ていたらグタッと寝てしまっていた。一瞬、目が醒め、ソフトバンクがサヨナラ勝ちしたと分かった。きっとアナウンサーの絶叫で覚醒したんだろう。でもそのあとまたバタリ。日付が変わり0時半頃、外来の救急搬入依頼連絡で目が醒め、ここでようやく元気が出て診察、入院指示などして1時間を過ごした。
また入院患者か。正確にいくら患者がいるんだと電カルで確かめると25名もいた。このうち一般病棟23名、回復期病棟2名だから指示出しが頻繁に必要な患者が圧倒的に多い。うー、忙しいわけだ。来週も1回当直が組まれているので今月いっぱいは忙しい日が続くぞ。そうそう、4月16日にクリスティーの「春にして君を離れ」を読み終えて次はポアロ物の「ゴルフ場殺人事件」を読み始めたが7ページ読んだところで止まってしまっている。寝てしまうからだ。
「春にして君を離れ」はクリスティーが別名義で書いた非ミステリー物の代表作だ。霜月蒼氏の激賞ほか評判がいいのでやっと手を出した。だいたいミステリーだからクリスティーを読むのになんでロマンス小説なんか・・と40年間私は見向きもしなかった。しかし読んでみると、殺人は扱われないものの確かに面白い、というか非常に考えさせられるテーマが彼女らしい筆致で書かれているので引きこまれてしまう。amazonのみんなのカスタマーレビューをみても数多くの人が感想を書き込んでいて、あまりに多いので調べてみたら全クリスティー作品で93件と一番これが多かった。2番目がかの有名な「アクロイド殺し」で76件、次がこれも代表作の「そして誰もいなくなった」の71件でほかはぐっと落ち他の有名作「オリエント急行」と「ABC殺人事件」がともに29件でこれでも多い方だ。「春にして・・」が圧倒的で、いかに読者の共感を得ているか分かる。
中年の女性主人公が娘のいるバグダッドを訪問し帰る途中、天候不良などで砂漠の安宿に1週間近く停留を余儀なくされる。その前にイギリスの女学校時代の友人をばったり会ったことがきっかけで、宿に泊まっている間これまでの結婚生活を振り返って思いをめぐらす、という内容だ。全体の8割が彼女の回想と現在の心境を描いている。良き妻、良き母と自認していたのだが果たして・・。
出版は1944年でまさにクリスティー名作目白押しの頃の作品だ。当時メアリ・ウェストマコット名義で出しクリスティー作品とは知られないよう箝口令を敷いていたという。作中で主人公の回想シーンがクリスティーのミステリー描写に似ていると思った。夫と友人の妻が4フィート離れて座っていて顔も見ずにしゃべってもいない様子、つまりは何も関係ないか良くない間柄だったと思う。しかし後にこのシーンはお互いが相手を思うあまりの態度だった(触れなば二人はただでは済まない、必死でこらえている)と思い至るのだ。あるシーンに二つの意味をもたせ読者を誤誘導するパターン。そのようなテクニックを駆使しつつも普通小説でも読ませる力は相当なもので、クリスティーが今でも読まれ続ける意味がよく分かった。
最後に、ラスト近く、登場人物同士の会話でナチスについてや戦争に勝つかどうかの話題が出る。まだ戦争終結まで2年はある時点だがそれらの評価が今読んでもまったく違和感がない。クリスティーが健全な判断力の持ち主だったと分かるのもうれしいことだった。
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