2015年11月5日木曜日

「インフルエンザワクチンは打たないで」にダマされるな!

Facebookを見ていると時に宣伝まがいや一方的な考え方、思想にとらわれたサイトに誘導されることがある。中には人の無知や不安につけ込んで自分の主張を信じ込ませようとするものとか・・。それがさほど害のないものなら笑って済ませられようが、インフルエンザワクチンを否定する立場のサイトには呆れ、怒りも覚えた。

「インフルエンザワクチンは打たないで」と題して国立公衆衛生院(現・国立医療保健医療科学院)疫学部感染症室長も務めた母里啓子(もり ひろこ)氏の主張を元にワクチン害毒論を展開しているがほとんどがデータの勝手読み、事実誤認で自分の主張に誘導するための迷惑な内容である。権威のありそうな人(この場合は母里啓子氏か)が「実はXXは間違い」と言うのを聞くと本当にそうなのかという気になってしまうのは仕方ない。そして中盤に「じつはインフルエンザ・ワクチンはほとんど効きません。これはウイルス学者たちの常識で、日本で接種を始めた当時からそう言われていたそうです。高齢者の肺炎や乳幼児の脳症はインフルエンザとは無関係です。『かかっても重症化を防ぐ』も嘘。そのようなデータは全くありません。」と畳みかける。もうこの辺でこのサイトの内容はおかしい、間違いだと医師としての私は気がつく。ウイルス学者たちの常識は書いてあることの逆である。確かに100%ワクチンが効くことはなくまあよくて70%くらい、年によっては50%いかないこともある。しかし重症化を防ぐし(それも100%とは言わないよ)、高齢者や乳幼児の脳症も発生数は間違いなく低下させているはずだ。

前橋市での感染予防効果がなかったというデータが紹介され、ワクチン無効の根拠になっているようだが、実はこれ1987年の古いものでまだインフルエンザ迅速診断キットもなくその研究ではインフルエンザを発熱(37℃以上)と欠席日数(連続2日または3日)だけで診断していた。つまり、他のウイルスによる風邪を排除できておらず、また、統計的な解析も不十分で今だったら『周囲への感染予防効果はない』という結論にはならなかったはずの代物なのである。その後大規模な調査が行われ周囲への感染予防効果を認める研究がいくつも出ているのにも関わらずそれらは都合良く無視しているのだ。実感としても青雲会病院では毎年全職員にワクチン接種して一部の職員では発症者はあるものの一番感染を受けやすい外来NsやDrはほとんど発症しない。それにあの2009年の新型インフルエンザの年、家族で私一人だけが発症しなかった。11月始めにテルからセージ、カール、チッチとバタバタと発熱で倒れたのに10月にワクチンを受けていた私はどうもなかった。5人分のほっかほか弁当を買いに行ったことを思い出すわ。

そして怒りを覚えるのはワクチンに水銀やホルマリンが入っているかのように書き、打つと害毒すらあるという結論に持っていっている点だ。ダマされやすい性格の人、国や権威のある組織に不満、不安を持っている人はすぐに信じてしまうかもしれない。このサイトを読んでいてかつて私が批判した「買ってはいけない」というトンデモ本とそっくりな主張、論理の持っていきかたを感じた。ワクチンを打つのが確かに100%問題なく効果があるとは私も言わない。そのわずかな否定的要素だけを強調し、多くの人には有効でもしかしたら命すら救えるかもしれない手技を貶(おとし)めるこれらの主張こそ害毒である。

だいたいさー、何百万何千万の人たちがワクチンを打つのよ。ワクチン害毒の主張が正しいなら何でその何百万何千万の人たちが文句を言わないのかふっと考えれば分かりそうなのにね。エキセントリックな主張にころりとダマされる方、本当に気をつけて下さい。ワクチン打たないぐらいならまだしも、同じような論法で財産や人生をだまし取る似たような手口がいっぱいあるんですから。

(酸化マグネシウムの過剰摂取で死亡のニュースや加工肉の大腸癌発生増問題も実はそれほど気にしなくていいと分かるのだが、ワクチンを攻撃する側はこれらを徹底的に否定するよ、いかに「買ってはいけない」や「摂ってはいけない」かを強調し過ぎるくらいする、見ていてごらん。)

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