2014年2月22日土曜日

臨死経験値

明け方、隣接する老健青雲荘から連絡が入った。膵腫瘍末期でこの間まで青雲会病院に入院していた高齢男性の状態が思わしくなくそろそろ厳しいということのようだが問題は娘さんがまた病院に転院させて欲しいと訴えているということだった。電話で聞いた時からそれはもうあり得ないと思った。娘さんが老健に駆けつけたというので私も行き、紙カルテで事前におおよその病歴をみてから患者に接した。で、呼吸が弱くむくみもあり利尿剤を指示した。そして娘さんに今から病院に移ってやれることはほとんどなくするとすれば点滴や気管内挿管だが助かる可能性もまずなく患者さんに無理強いさせるだけだと諭すように話した。納得され、私は一旦病院に戻ったのだがそれから1時間半ほどしてまた連絡が入った。心肺停止状態だという。病院と老健は内部でつながっているのですぐにまた駆けつけ看取った。やはり転院させなくて良かったのだ。

病院に戻ると信号Drがいたのでさっきのいきさつを話した。すると「最近はおじいさんおばあさんといっしょに住まなくなってその死ぬ様子を見たことがなく経験していないからでしょうね」との見解だった。なるほど。なかなか肉親の死が近いのを理解出来ないというかいつまでも生きていてくれるような錯覚に陥っているような家族が多いのはそのせいか。私などは小さい頃いっしょに住んでいたアキエ、デンシローの死で身近にそれを感じていた。今は祖父母の死も親戚のおじさんが亡くなったくらいにしか感じられないのかもしれない。担当していた90才以上の患者が亡くなった際にその家族に怒られたりなじられるような態度を取られたことが何度かあるがそういうものなのだと思うようにしよう。人はそれぞれ経験値が違って当たり前なんだとね。

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