2014年2月24日月曜日

虫の居どころ

朝の外来で「お尻がむずむずして虫がいるみたいだから薬を出して欲しい」という高齢女性が来た。本当に蟯虫のような虫だったのかは確認は出来ず定かではない。蟯虫は仮に体内にいてもそれほどひどい悪さをするわけではなくはっきりしない中で駆虫薬を出すのもどうかと思ったが結局処方することにした。1回飲めばほぼ虫下し出来る。実際に駆虫できるかどうかより寄生虫ノイローゼとでもいうべき患者の気持ちが整理出来る意味合いの方が大きい気がした。

私も小学5年のころお尻がかゆくなるときがあって自分のお腹の中には蟯虫か回虫か寄生虫がきっといると思い込んでいた。おまけにぐるぐる音がする。虫が動いているんだ、ああ、どうしようって。その音が弟や親に聞こえやしないか気になって仕方なかった。保健室には気持ち悪い虫がうようよいる体内模型もあってそれを見るたび落ち込んでいた。

そんな折り、寄生虫検査が学校であった。ああ、来たよ。きっと自分は呼ばれる。先生に薬を飲みなさいって言われみんなにばれる時が来るんだ。まるで罪を受けるような気持ちで結果を数日待った。しかし呼ばれなかった。陰性だったのだ。あれ?と思うと同時に本当かなと疑問も湧いた。しかしいるはずだからと再検査を申し出る気も起きず、しばらくすると寄生虫のことは考えなくなった。今思えば寄生虫ノイローゼだったのだろう。お尻のかゆみも虫のせいだったか怪しいしお腹の音も普通の蠕動運動に伴うものだと今なら冷静に判断できる。子供時代のある一時期の気の迷いみたいなものでこのケースに限らず勝手な思い込みや勘違いはみんなも経験したことがあるのではないだろうか。多くは忘れたり矯正されたりして大人になっていく。今日はそれを思い出したよ。

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