2021年9月22日水曜日

コロナからの復帰を拒まれる

外来に50代女性患者が来てコロナのPCR検査を受けた。実は8月にコロナ陽性で入院し8月30日に退院している人だった。ということは今日は9月22日で、すでに3週間以上も経過し職場復帰は何も問題ないはずなのだが、事業者より「PCRで陰性にならないかぎり職場復帰は認めない」と言われ、前回9月17日に陽性だったので今日も検査を受けに来ていた。で、結果はやはりまだ陽性。がっかりした様子の患者さん。これはそこの事業者はちょっと問題ではないか?実は復帰基準は満たしており職場には戻れるはずだからだ。

というのも厚労省のコロナ感染患者による職場復帰の基準というのがあって以下に概要を載せてみる。

<入院者の職場復帰目安>
(1)退院基準を満たし、主治医の指示により退院していること
(2)職場復帰に際して、1週間程度の在宅勤務(あるいは自宅待機)を行ってから出社することが望ましい。
(3)在宅勤務での取り扱いが困難な場合は、復帰後は、毎日の健康観察、マスクの着用、他人との距離を2m程度に保つなどの感染予防対策を行い、体調不要を認める際には出社はしない。
(4)会社が復帰する社員に、医療機関の「陰性証明書や治癒証明書」の提出を求めないこと

※退院後にPCR検査の陽性が持続する場合がありますが、 PCR検査陽性であることが「感染性がある」ことを意味するわけではありません。
※感染性は、発症2-3日前から発生し発症直後に最大になり、7日程度で急激に感染性が低下すると言われています。

この患者さんは9月17日の時に「職場復帰はPCR陽性でも問題ない」との証明書を主治医が書いて手渡しているにも関わらず、事業所長は復帰拒否していた。しかも病院に直接電話してきてPCRの結果を教えるよう要求もしたのだった。個人情報保護の観点からそれは教えられないと事務方が返事すると「患者が嘘ついていたらどうするんだ、教えて欲しい」と言ってきたという。それでもこちらが教えることはない。患者さんは困った様子だった。

一言で言えばPCR検査結果を盲信しているとしか言いようがない。PCRはコロナウイルスの死骸や破片でも敏感に反応し陽性という結果が出ることがあり、コロナ感染後に改善し、感染力がないのに1ヶ月以上陽性反応が出ることがままある。退院基準は発症から10日以上経過し症状軽快し72時間経てば退院可能でその際PCR陽性か陰性かは関係ない。無症状患者で少し早く退院する場合はPCR陰性2回を確認する必要があるが、ともかくもこの患者さんの場合は感染力はないと判断でき、退院後3週間以上経過しているのだから何ら問題ないのである。

これ以上職場復帰拒まれたらどうしたらいいと尋ねられ、今回の結果表にも「復帰に支障なし」と付け加えた上で「労働基準局とかに相談するのはどうか」と答えておいた。おそらく事業者は復帰基準をしっかり読んでいないのだろう。もしくは不安がりすぎか、医療機関を信じていないか。もし訴えても患者さんが負ける要因はない。本当かどうかは分からないが「(私は)欠勤扱いなんです」と言っていた。こうなるとパワハラもどき、差別に近い態度ではないか。コロナに罹ったのは本人が悪いわけでも何でもない。このような誤った処遇がないよう事業者はしっかり対処して欲しいものだ。

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