2019年6月16日日曜日

「泥棒の巣から出たい」

よく晴れた日曜の今日、あこネーサ母の見舞いにカールとギボヒサコと出かけた。今は道路が良くなって50分ほどで知覧の老健施設へ着ける。明石屋のシュークリームを忍ばせ、母の部屋に入ると不在で、どこにいるのかと思えば、大きな廊下にある椅子に座り他の入居者らと会話をしていた。私を見つけると「およ〜来たかぁ」と顔を上げ、隣の人たちに「(息子は)今は大学病院にいるの」と20年近く青雲会病院に勤務しているのに誤情報を教えていた。まあ、私が医者をしているということが知れればいいのだろう。

母は杖を突いて歩くのだが、そのスピードは今のギボヒサコよりはずっと速い。ヒサコとの再会を喜びつつ部屋に戻り、ヒサコに「脚は大丈夫だったですか」と尋ねていた。3月末の最初の訪問の記憶は残っているようだ。「ええ、大丈夫です」と返事すると、今度は声を潜め「ここはねぇ・・泥棒がいるんですよ」と語り始めた。この施設は泥棒の巣で、首に掛けていたお守り袋の中のお金を夜明けに忍び込んできた泥棒に盗られたんだそうだ。もうツッコミどころあり過ぎのシチュエーション。しかし私は無理に訂正しようとはしなかった。その話の3分後には「ヒサコさん、脚は大丈夫だった?」の問いかけがあり、4分後には「泥棒がいるの、おとろしかぁー(恐ろしかー)」が繰り返されるからだ。

「まあまあ、それよっかシュークリーム食べよう」と手渡すと一口食べ「うんまかー」と全部平らげてくれた。この施設はお菓子などは持ち込み禁止なんだが、これだけ喜んでくれるんだ、守ってられるかいな。

窓を見るとちょうどこの施設のワンちゃんがいた。なでなでしてあげたいが窓は開かないようになっている。この犬を見て母は「(部屋に)入って来るから怖い」と言う。「絶対に入って来ないよ」と教えても今度は5分おきに「犬が入ってくるから(どうにかして)と職員に言うのだが何もしてくれない」と愚痴をこぼすようになった。ワンちゃん、人なつこそうなんだがねえ。母は犬は元々嫌いなんであった。

目下のところ、あこネーサ母の願いはこの施設から出ることだ。確かにねえ、同じようなお年寄りがたくさんいて管理もきちっとしてくれていいのだが、息が詰まるのかも。で、チエコンさんが別の施設を探してくれている最中らしい。もうしばらくだよ。今度は泥棒もいない・・いや、きっとそこの施設にも泥棒はやって来るだろうけどね。今度会う時はもっといっぱいお菓子を持ってくるから、またねー、母ちゃん。

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