2020年10月9日金曜日

男には嫉妬を女には恋心を

 内視鏡検査に来てくれているたつやまDrから「中山祐次郎って鹿大出身のドクターが本を書いてますよね」との話題が出た。そうそう、南日本新聞の日曜版にエッセーを月1くらいで寄稿している。こてる日記にも話題にした(2020/8/18「中山祐次郎氏随想から「森と湖の里」の思い出」http://koteru-nikki-2015.blogspot.com/2020/08/blog-post_18.html)。

続けて彼が言うには、「中山氏は9月20日南日本新聞の日曜随想に入学してから入ったサッカー部に1才年下だけど1学年上の先輩のことを話題にしていた。実はその先輩とやらを私も知っています。今は大学の外科Drです。で、エッセーの最後にその先輩の名前を出していたんですよ。いいんですかねえ、個人情報なのに」と。まあ笑いながらであったが、私は別にその程度はいいんじゃないのと思ったのと別の意味で急に興味が湧いてきた。とりあえずはそのエッセーを↓にあげてみよう。タイトルは「年下の先輩、敬語、嫉妬」である。

他の年下の先輩には敬語が使えるのにその彼にだけは出来ない、ということはその彼にだけそうなる理由があったということだ。中山氏自身がその彼に嫉妬していたからと分析している。「ラ・サール出身で、実家は金持ちで、ずいぶんイケメンで、酒が強く、足が速かった」んだそうだ。なるほど。で、名前が「ノダ」さんだと。外科Drでノダか・・もしや・・。

あれは6年以上前のこと、今でもそうだが青雲会病院には週1回大学外科から当直に来てもらっている。その日、当直に来る予定のDrが「少し遅れます」というので、私がその間代わりに外来で救急当番をしていた。18時半を過ぎて外来も一段落したころ、病棟の若手ナースがなぜか救急外来にやって来た。「今日はノダ先生は当直に来ないんですか」と尋ねる。私は「いや、来るよ。でも少し遅れるっていうから私が代わりをしている」と答えると、少し困ったような顔をしてしばらく「先生、だったらこれをノダ先生に渡して下さい」と紙切れを渡された。見るとそのナースの携帯番号だった。!。

私は驚いた。いや、若いナースが格好いいドクターに恋するのは別に珍しくもないが、積極的にアプローチするその姿勢にだ。へーえと思い、「わかった、ちゃんと渡しとくよ」と請け負った。その時の彼女の表情がなんとも味わい深かった。あれが恋する乙女っていうのかな、仕事で見せる顔とは違い、少し遠くを見るような困ったような表情だった。

実は彼女は直接電話番号を渡したかったのだ。その日、夜勤だったらよかったのだろうが、昼間の仕事だったので、帰る前に「告白&電話番号渡し」をしたかったはず。本来は17時半に当直Drと交代のはずがその日は到着が遅れていた。1時間経ってもノダDrは来ない。自分も帰る時間だ。ノダDrが病院に来るのはせいぜい月に1回、このチャンスを逃すとまた1ヶ月後・・恋する乙女にはあまりにも長い空白・・どうしてもこの思いを伝えたい・・そこで18時半に救急外来に彼女はやって来た、というわけ。別に最初から私に頼みたかったわけではなかった。それから30分もしないうちに既に到着し当直室にいたノダDrのところに寄ってその紙切れを渡した。さすがに彼も驚いていたね。

その後どうなったのか。これを今読んでいる人もきっと知りたいだろう。私も知りたくて2、3週間経ったころかな、病棟の廊下で彼女がいたときに聞いてみた。すると大げさに恥ずかしそうに「センセ、何言っているんですかぁ」と反応したので「おいおい、ちゃんと教えろよ」と言い返したら、ちょうど病棟師長が近くにいて「あんたたち、なにやってるの(こんなところで)」と叱られてしまった。いえいえ私たちそんな関係じゃないですからって弁明したかったが本当のことなど言えるはずもない。

あれから6年、その乙女ナースは未だに独身で今ではベテランナースとして頑張っている。ノダDrとは数回食事に行ったりはあったそうだ。しかし彼女の思いがかなうことはなかった。今回この日記を書くにあたって、「ラ・サール出身で、実家は金持ちで、ずいぶんイケメンで、酒が強く、足が速かった」この人だよねと確かめると「まさにそうです」と認めていた。男には嫉妬を女には恋心を、罪なノダ先輩&ノダDrであった。

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