2018年3月26日月曜日

引き返して憩室

憩室出血が疑われ絶食点滴中だった高齢女性患者村正さんに再度大腸内視鏡を実施した。今度こそは出血源憩室を見つけてやると意気込み、1時間近く全大腸の憩室をあら探しした。具体的には先端フードで憩室を吸引反転刺激し出血を来たさせるか、露出血管を見つけるかだ。出血は本来ない方がいいのだが出血がないと出血源憩室を特定するのは難しい。だが結局、犯人は見つからなかった。S状結腸に憩室がたくさんありその辺りにあるのでは?と何度か見直したのだがなあ。

本人、家族に説明しとりあえず食事開始OKとし数日は経過観察する方針を伝えた。もし、また再下血あればその時はすぐに内視鏡を突っ込むとも。

夜、高速で帰宅途中、病院からスマホに連絡があった。「先生、村正さん下血しています!」だって。おお、出たか。「もう自宅近くなんで一旦帰宅し夕食大急ぎで摂ってからすぐに引き返す」と返事した。普通の人なら「なんで夜に、しかも帰る途中に呼び戻されるんじゃ」とぼやくところかもしれない。しかし憩室出血治療界ではこれは大いなるチャンスなのだ。

帰院後、前処置なしでさっそく大腸内視鏡挿入した。案の定腸管内は血液だらけだ。しかし横行結腸、奥の上行結腸は血液付着が少なくどうも下行結腸以下に出血源はありそう。よーく見れば下行結腸の脾弯曲近くに新鮮な血餅があり犯人の居場所は近いぞ。すると新鮮血の流れがあった!フードと注水で確認するとかなり小さな憩室から出血しているのが見つかった。やった、これで勝った。見つかればこっちのものなんだ。しっかし、出血なければ極小の憩室でとても露出血管がそこにあるとは分からない。クリップで目印し内視鏡室を入れ替え結紮ゴムで縛り上げ止血した。(下が出血している様子)

ところがうまくいったかと思いきや、実は最初の目印クリップを一つ隣の憩室に掛けてしまいわずかに出血源からずれていた。うわわ、この手技を始めたころの数年前にこの手のミスをしたことがあったが今回はちと喜びすぎたか。スコープを抜いて改めて掛け直しどうにかうまくいき事なきを得た。ふう。こんな小さな出血でも動脈出血だから体の血液が半分くらいになるほど危ない病態なのだ。この患者さん、1月2月今月と何度も下血を繰り返し輸血までしたので今回の止血術成功は本当にほっとした。憩室出血治療は1回や2回であきらめたらあかん、今回も粘り勝ちやったなあ。

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