私が受け持つのは比較的珍しいのだが、今、急性肝炎の患者がいる。「原因が分からないので精査加療を」と他院から紹介を受けるも普通のA型、B型、C型ウイルス肝炎はいずれも陰性だった。特殊な自己免疫性の肝炎もあるかもしれないし、患者本人に他にいろいろ思い当たるふしはないか尋ねてみた。
すると本人は代行業をしているからお客さんからうつったんではないかと気にしていた。ああ、それはないですね。インフルエンザや結核など飛沫感染するのは呼吸器感染ではあるけれど通常の肝炎は口から何か入るか、血液などが直接体に入らないと起こらないです。何か最近変わったもの、例えば健康食品や薬など飲んでいないですか。肝機能の推移を見ると徐々に改善傾向で薬剤性っぽい印象があるしー。しかし思い当たらない。そうですか。ま、なかなか原因は分からないことも多いです、といって病室を引き上げたのだった。
で、今日、病棟に行くと、看護師から「あの患者さん、先生との話しの後、もしかしたらって言ってきたのがですねー」と有力情報を教えてくれた。実は、蜂の子を100匹ほど食べたんだとか。蜂の子?なんだそれ。直に尋ねてみた。
家の庭にスズメバチの巣が出来ていてそれを始末して中にいた蜂の子を取り出しフライパンで焼いて全部食っちまったと。先生の話しを聞いたらそれが悪さしたのかもと思って・・と。きっとそれだ。普段みんなが食べないようなものを100匹も食べればおかしくなる。実際、その翌日からなんだか調子が悪くなったという。スズメバチの巣は自ら一気に黒いポリ袋を被せ、1時間ほど直射日光にさらすと、成虫、幼虫(蜂の子)ともにみんな死んじまうんだそうだ。成虫はなんとアルコール(焼酎)漬けにし幼虫は油揚げか直焼きかは聞き損ねたがともかく焼いて食べた。
しかも100匹もとはよほど美味しいのだろうか。日本の地域によってはこれを佃煮のようにして特産品のようにして売っているところもあるらしい。
ところで今日の南日本新聞に蜂や蜂蜜の農薬汚染のことが出ていた。それによるとネオニコチノイド系農薬が蜂蜜では6割超で国の暫定基準を上回ったそうだ。ただ日常生活で食べる量であれば人の健康にすぐに影響が出るレベルではないとのこと。とはいえミツバチからも検出されているというからスズメバチの幼虫も汚染されていた可能性は高い。
何度も言うがそれを100匹も食べれば農薬を口に入れたのと同じことになるのではないか。だとすれば肝炎を起こしても何ら不思議はない。患者にこのことを伝え、今後蜂の子は食べない(たくさんはネ)よう指導した。あと、蜂酒は・・飲まずに捨てましょか。
いやはや、こんなケース(症例)もあったもんだ。
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