2019年1月19日土曜日

止めてやる!

土曜の外来に新鮮下血の高齢男性患者がやって来た。病歴を見れば昨年10月、12月に大腸憩室出血で当院に入院2回していた。1回目は出血源憩室が見つかりピッピDrが内視鏡処置し、2回目はクニンダDrが検査したが出血源が見つからず安静自然止血で退院となっていた。今現在まだタラタラと下血があるという。よしっ、これは出血源探索の良いチャンスだ。点滴しつつニフレックを飲ませ昼一番で大腸内視鏡を予定した。今回は造影腹部CTもやっておおよそ下行結腸からの出血と目途を付けていた。

相変わらず多いインフルエンザ患者の中にこうした内視鏡治療を必要とする患者が紛れ込んでくる。土曜は単なる胃痛では内視鏡はしない決まりにしていて、行うのはこのような吐血、下血など緊急性の高い患者が対象だ。ちょうど内視鏡室主任の佳及Nsもいて外来の西友Nsも手伝ってくれ大腸内視鏡を開始した。予想通り下行結腸付近の憩室が出血源と思われたがすでに出血は止まっていて責任憩室がどれか分からない。S状結腸にも憩室多数あるしなぁ。しかし簡単にはあきらめない。ちょいと刺激すれば検査中に出血して出血源が分かることがよくある。吸引をして憩室を1個1個刺激反転させる。うーん、数も多いしなかなか見つからない。

そのうち、男性が「おしっこに行きたい」と言い出した。点滴を速めさせすでに2本目も終わろうとしていた。当然排尿もしたくなる。検査中に漏らされては嫌なので一旦抜去してトイレに行かせた。これが結果的に良かった。帰ってきて再挿入すると、おや?さっきより赤い血液がある。そう、立って排尿してそれが刺激になり憩室の再出血を起こしたのだ。これを逃してなるものか。下行結腸のごく小さい憩室からじわーっと出血しているのを見つけ、クリップでマーキングしスコープをまた抜去、結紮ゴムを付けクリップごと絞扼し止血した。これでばっちり。12月に出血したのはおそらくここだったと思われる。

実は1月4日にも明らかに憩室出血の患者がいて、その時は何度も観察しても見つからず、医師の息子氏に「(今度再出血したら)止めてみせる」と見得を切ったが、結局安静のみで後日退院になった。一般にはそれでも良しというのが憩室出血の治療だ。しかしいつまた再出血するか不安が残る。だから私は完全止血に執念を燃やしている。確か止血率は50%は越えているはず。今年はこれで1勝1敗。勝負事ではないけれどこういう風に気合いをいれないとついつい安易な治療に流される。憩室出血治療は私のライフワークぽくなっている。今度もまた止めてやるぜい。

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