特にベティという雌グマとその子どもたち、途中は関係者の間ではハッチと呼ばれる雌グマとその子どもたちの歴史と現状が出てきてこれが泣ける。雌グマは実は雄グマにも相当を警戒しないといけない生き方を強いられる。繁殖期の雄グマは子クマのいる雌が興味を持ってくれないと子クマを殺すこともあるからだ。映像では子クマを守るために先に逃がし、自分は方向を変えて雄から逃げるベティの様子が映し出されハラハラさせた。しかし1ヶ月経った頃、ベティの子クマは2頭から1頭に減っていた。↓はまだ2頭の頃のベティの子グマ。浜辺で遊んでいる。
別のヒグマはエサが少なくなって断崖絶壁を登って海鳥やその卵を襲っていた。そんなシーンなどこれまで確認されてこなかった行動で、私など「お前はそれでもヒグマか」なんて思ったが、逆にそれほどまでに追いつめられているんだとも思った。↓はカモメの巣を襲うヒグマ。下は断崖絶壁である。これらは以前と違う生態系の変化のせいであって、世界でも特に急速に進むオホーツク海の温暖化が原因と考えられている。特に北からやって来る流氷は、海に栄養を運び、プランクトンから魚類、海鳥、ヒグマに至るまで多様な生命を支える基盤であったが、過去40年で流氷面積は約3割減少し、将来的には北海道沿岸から消失する可能性も指摘されている。この変化は海だけでなく陸の生態系にも連鎖的な影響を及ぼしているといい、象徴的なのがヒグマの異変だってことだ。知床がヒグマにとって以前は住みやすい環境だった最大の理由がカラフトマスや鮭の大群が北の海から川に産卵しにやってくるからだった。9月になるとヒグマはマスや鮭を獲り放題食べ放題だったのが、2020年以降徐々に魚は減って来て2024年は濃色繁殖地だった所でさえ全くやって来なくなった。そこに18年も住んでいたハッチとその子クマ3匹は困って食べ物を求めて40kmも移動をせざるをえなくなった。そして2025年、居住区に近づきすぎたハッチとその子らは「駆除」されてしまった。その場面は映像には出て来ない。「記録」としてナレーションが語るだけだ。↓はエサを求めて放浪中のハッチ親子。
去年からクマは怖い存在、人間にとって駆除すべき存在というイメージが付きまとっているが、この番組を見たらとてもそんな簡単に片付けられるものではないと痛感した。番組の最後は冬眠が明けての2026年春、知床の浜辺に2頭のヒグマが見えて、それがベティとその子グマだと分かる。ずっと見てきてホッとさせられる瞬間だ。しかしそれとて今現在生き残っているのか分からない。温暖化をもたらしたのは間違いなく人間だ。豊かな自然環境を守っていくのは人間の務めなんだと番組では声高らかに訴えては来ない。しかし見れば視聴者は必ずそう実感するはずだ。この番組が「2026年度新聞協会賞」を受賞した作品だと見終わってから知った。



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