舞台は朝鮮戦争後の韓国で、その頃女性国劇という日本で言えば宝塚歌劇団のような女性だけが歌い踊り演じる演劇が大流行していた。木浦(もっぽ)という海辺の田舎に住んでアサリと魚を売って貧しい暮らしをしていた娘ジョンニョン(キム・テリ)は巡回でやって来た国劇の舞台を見て魅了される。その際にムン・オッキョン(チョン・ウンチェ)という男役スターに気に入られ梅蘭国劇団の研究生試験に臨むことになる。補欠でどうにか入団出来たジョンニョンにはライバルとなるホ・ヨンソ(シン・イェウン)や親友となるホン・ジュラン(ウ・ダビ)らがいてさらなる上を目指していくという話だ。
ライバルのシン・イェウン演じるホ・ヨンソは医師とソプラノ歌手の娘で幼い頃から歌手になる教育を受けて来たという経歴の持ち主だが、内面ではコンプレックスを持っているという役柄で、これなんかは演劇の天才北島マヤとそのライバル姫川亜弓のマンガ「ガラスの仮面」と設定が似ている。研究生のやる国劇の舞台でジョンニョンを気にくわない一部研究生らが罠を仕掛けてジョンニョンを困らせる場面など「うわぁ〜ガラカメだー」と思った。他にも端役なのにジョンニョンが悪目立ちしてしまい劇団のカリスマ団長から役を降ろされる場面もガラカメに似たような場面があった。まあ演劇をテーマにドラマを作ればそうなるのかもしない。全12話でまだ現時点で見終わっていないものの、キム・テリはマンガの北島マヤなみにすごい演技力の持ち主というのがビンビン伝わって来る。
そのホ・ヨンソ役シン・イェウンも魅力的だ。彼女も相当練習を積んできたのだろう。20年くらい前の韓ドラ「ファン・ジニ(2006)」でも主人公とライバルの演技対決がテーマの一つだったが、ライバル役の劇中劇の演技のバリエーションがあまりなくそっちに関してはしょぼいなと思って見ていた。しかし「ジョンニョン」では脇役に至るまで全く手を抜いていないのがありありと分かる。わずか全12話のためにそこまでやりきるかと感心する。
劇団のスターで男役のチョン・ウンチェはいかにもそれらしい振る舞いで話題になったようだ。彼女は他の役者より遅くキャスティングされその分最後の舞台になる演目はドラマ撮影最後まで練習し続けていたという。その甲斐あってか、ドラマの中でも現実の視聴者でも人気を得たのは良かった。私の好みで言えばジョンニョンの親友役でお姫様役が似合うウ・ダビかな。出演者中、彼女が一番の美人に見える。ただ単なる添え物的な役柄ではなくドラマでは彼女の成長と挫折が描かれてもおり奥が深い。そして団長を演じるラ・ミラン。この人も上手いねぇ。いかにも厳しさと懐の深さを醸し出している。韓ドラといえばルックスの良い若手俳優が話題になるし実際それが売りのはずだが、このドラマにはその手の俳優は全く出ない。しかし準備とお金を掛け、それに役者たちがしっかり応えれば人気俳優は出なくても面白いドラマはいくらでも出来るってことだ。私はいつもは早送りして見るのにこのドラマはほとんどを通常速で見た。早送りがもったいないと感じる場面ばかりだったからだ。
このドラマを見るためにDisney+に入会しても損はない。個人的には各賞を総なめにした日本とハリウッドの「SHOGUN将軍」よりはるかに面白いと思うほどだった。
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