カリウムがその人は異常に低かった。K(カリウム)は正常値が3.6〜4.8である。それが2.6まで低下していた。この数値はやばい。不整脈を起こしやすく時には致命的にもなり得る。いつから低いのだろうと検査結果のグラフを見ると↓のように2023年の7月から低下し始めていた。
私の受け持ち患者ではなく、担当医もその程度の低下は気にとめなかったのだろう。しかし2.6という数値は医師なら誰もがびっくりする数値だ。
こんな時まず考えるのが下痢が続いてKを含む電解質が喪失したのかだが、この方は検診で便潜血陽性のための大腸内視鏡であって下痢はしていなかった。ならば次に考えるのは薬剤性の低Kだ。Kを下げてしまう薬剤にはまず利尿剤が上げられる。例えばフロセミドは非常に利尿作用が強く昔からよく使われるが低Kを起こす薬剤として知られている。しかしフロセミドはおろか利尿剤の使用歴は全くなかった。しかし、よーく処方内容を見ると「半夏瀉心湯」が朝夕2包出ていた。あ、これやー。成分をチェックすると案の定「甘草」が含まれていた。薬の注意事項に「本剤はカンゾウが含まれているので、血清カリウム値や血圧値に十分留意すること」と書かれている。甘草にはグリチルリチン酸という成分が含まれこれを多量摂取し続けるとKが低下しやすくなる。この人は2022年の12月から半夏瀉心湯が処方されすぐにはKは下がらなかったが半年後からゆっくりと下がり始めとうとう危険値にまで下がってしまった。
すぐにこのことを話し、今日から服用を中止、そしてK補充の錠剤を処方した。そもそもなんでこの漢方が処方されたのか。カルテ記載では「患者本人が希望」とあった。胃もたれなどでこの漢方が効くと知り所望したようだが漫然と使い続けるとこういうこともあるのだ。私は以前、他医紹介の患者で同じようにKが2台のケースがあり、甘草を多く含む漢方が1日3包計6包も出ていて即刻止めさせたことがあった。特に「漢方は副作用がないから」を誤った知識を持っている患者さんも多いから注意が必要だ。専門的なサイトになるが漢方の低Kについてのまとめが→https://www.nikkankyo.org/seihin/take_kampo/110405c/kanzou.pdfだ。参考までに。
今日の教訓:「薬も過ぎれば毒となる」
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