また来週月曜には朝礼スピーチが控えている。で、いつものことだが1週間を切っているのにまだテーマが決まっていない。だが、昨日の院長室での些細なやり取りで急にテーマが浮かんだ。それは放射線科のつくだ煮君が業務報告に来た際に「個人的なことですが・・」と相談してきた内容がきっかけだった。
「3月に受けた院内での健診で便潜血陽性が引っかかったんですが・・」「ほう」「2日間のうち1日だけ陽性でそれもその度合いが基準値よりほんのわずか上回っているだけでしてー」と、ここまで聞いて私は即座に反応した。「何を躊躇している、必ず大腸内視鏡を受けなさい。陽性と結果が出たなら2日に1回だろうが、わずかに陽性だろうが受けるんだ!」そして「お前なぁ、便潜血陽性になったらこれは『ああ良かった、有り難いことだ』って思わないとー」と強調したのだ。
検査に引っかかったのに有り難いってどういうこと?当然の疑問だ。それを解説した。「そもそも大腸癌で死ぬ人ってどんな人か知っている?」答えを聞かず私は続けた。「それはね、大腸内視鏡を受けたことがない人たちなんだ。肉を摂りすぎたからとか繊維質を摂っていないからとかじゃないんだ。大腸癌って症状がほとんどないんだよ。特に早期癌はほぼ症状がない。進行癌ですらなかなか症状が出なくてかなり悪化してから腹痛だの血便だの貧血など出てようやく内視鏡を受けることになるが、その時にはすでに手遅れになっているのよ」「だから本当は国民の大人全員に大腸内視鏡を受けさせたいところなんだ。しかし現実にはそれはなかなか無理なんで、日本では検便をして少しでも疑わしい人を内視鏡検査させて早めに大腸癌を見つけようというシステムなわけ。何の症状もない人たちがいっせいに大腸内視鏡受けさせてくれと言って来ても国民全員がいっせいにコロナワクチン打った時のように、現場では受け入れが大変だ。だから少しでも大腸癌の疑い高い人を優先的に検査しましょうってことなのよ。で、一度でも検査を受けたらそうでない人に比べ何10%以上も大腸癌で死ぬ確率が下がるってのが調査の結果分かっているんだ。だから便潜血陽性で大腸内視鏡を受けるチャンスが出来たイコール大腸癌で死ぬリスクが大幅に減るってことなんだよ。宝くじに当たったようなものさ。貧乏くじを引いたんじゃない、全く反対のことなんだよ」
つくだ煮君は私の勢いに押されて「いえいえ、よく分かりました。ちゃんと受けます」と了解してくれたが、そこで私は「よし!これを今度の月曜のスピーチのテーマにしよう。健診や検診の異常結果をアンラッキーだと誤った発想をしている人が多すぎる。それらは病気で命を落としたり体調を崩してしまう予防にもなり、本当はとてもラッキーなことなんだよ」そして「ありがとう、つくだ煮君、使わせてもらうからね」とまくし立て、ようやくテーマが見つかったことで一気に奮い立つ私であった。
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