最初、消化器がん検診推進機構の会長の草野健先生が挨拶し、その後鹿児島県の検診現況を谷口健二先生が講演し、そして後半は佐賀県の検診を遠藤広貴先生が詳細に語ってくれた。最初は適当に流し見で済まそうと思って見ていたが、案外に面白くてスライドをデジカメでパシャパシャ撮って記録までした。鹿児島県の胃癌検診状況は全国的にみても優秀で全国平均よりもほとんどのデータが上回っていた。ところが招待講演の佐賀県はというと胃癌の死亡率が高く2008年には全国2位にまでなったこともあり医療や行政の観点から対策が必要になった。↓のグラフを拡大すれば分かるが、塩分摂取(胃癌の危険因子の一つ)の多い東北が多いのは知っていたが比較的胃癌の少ない九州、沖縄において佐賀がこんなに悪いとは意外だった。実は胃癌の発生により大きく影響するのは塩分摂取よりもピロリ菌感染であるのは最近では常識になっている。幼少時の汲み取り便所や井戸水の上下水環境が悪いとピロリ菌感染率が上がるのも分かって来ていて(私も田舎育ちで私を含め昭和30年前後の田舎の従兄弟姉妹たちがほぼ全員ピロリ菌陽性だった)、実は佐賀県は水道普及率が全国レベルよりもかなり悪かったんだそうだ。↓グラフ参照。ほう、そういうことだったのか。これに危機感を覚えた佐賀県知事と当時の佐賀医療界はなんとかしないといけないと全国に先駆けて青少年のピロリ菌対策に乗りだした。2016年から中学3年生全員にピロリ菌検査(尿で分かる)を行い、除菌薬もすべて公費無料にしたんだそうだ。ただ除菌しても1、2割の人は失敗する。その時は薬の種類を変えて二次除菌療法を行う。それも佐賀県は全額補助して上げるという。そしてそれでもごく一部の人は除菌に失敗する。その時は保険は効かない三次、四次除菌療法があるがなんとそれも補助してくれるというんだ。えらい!私は2017年に鹿児島県も後追いで高校1年生にピロリ菌対策で同様の対策が始まった時に「これはいい。ただ、どうせなら除菌療法まで補助すればいいのに」とこのこてる日記で書いたものだ(→「鹿児島県「ピロリ菌検査事業」」https://koteru-nikki-2015.blogspot.com/2017/07/blog-post.html)。
鹿児島県で残念なのはなぜかその素晴らしい対策を5年経過して止めてしまったことだ。佐賀県はピロマンというイメージキャラクターまで作ってピロリ菌対策を今でも継続している。私は思ったね。今でこそまだ鹿児島県は佐賀県より胃癌の死亡率は低いかもしれないが20年後30年後は逆転されるって。20歳代くらいまでにピロリ菌除菌を行うともともと菌がいなかった人と同じくらいの胃癌発生率になることが知られていて若い人の除菌はそれくらい有効なのだ。
う〜む、他者との遅れからくる危機感ってすごい。演者の遠藤広貴先生はピロリ菌治療にも執念を燃やしていて(ちょっとかつての私に似ている。かつて某製薬会社のMRから「青雲会病院が除菌療法使用数で全国2位です」と言われたことがあったくらい)親近感を覚えた。遠藤先生は鹿児島県の県民総合保健センターの鹿大第二内科初代教授佐藤八郎先生の書かれた記念碑「予防にまさるは治療はない」を引き合いに出していた。うわ〜、昭和61年4月ってその1、2ヶ月前に私は佐藤八郎先生と飲み会の二次会で隣同士の席に話しをしたことを思い出す。当時研修医1年目の私は鹿児島市医師会病院に3ヶ月だけ研修に行き、院長だった佐藤先生と直接会話することが出来たのだ。あの時「ちょっとヘモ(痔)の調子が悪くてね〜」と語っていたが・・・。
講演後の質問コーナーでは第二内科出身のセトジンDrに皮タックDrらが質問をしていた。↑は皮タックDrだが、後ろにはカピDrやニューマウンテンDrもいた。あはは二内科同期だよ。ちゃんと医師会館まで出向いて聴講していたんだね。みんなえらい!
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