2024年12月16日月曜日

「膀胱癌?切らずに治せますよ(イヒヒ・・)」

この前、長らく朝の情報番組「とくダネ!」のメインキャスターを務めた小倉智昭さんが膀胱癌で亡くなった。公表された時からステージⅣと聞いていたのでこうなるとは予想はしていた。最初に膀胱癌に気づいたのが2016年で赤い粉のような排尿があったそうだ。細胞診で癌が疑われ、内視鏡手術後に先生から「粘膜がんではなく、筋肉層まで食い込んでいる浸潤がんで、状態がかなり悪いからなるべく早く膀胱を全摘してください」って言われた時が運命の分かれ道だった。

「膀胱摘出をすぐには決断できなかった」という。膀胱の全摘というのは、精巣や勃起神経、前立腺など周りのものも取ることになってしまう。本人によると、やっぱり男として未練がましいところがあったので「ちょっと考えさせてください」と言って、インターネットや本でいろいろなことを調べた。本の中には『がんは切らずに治る』とか民間療法を紹介するものも多かったとのこと。「それらを片っ端から読んで、新しい抗がん剤を取り寄せたり、がんを活性化させない治療などに飛びつきましたね」「やっぱり少しでも長生きをしたいと思うので、他に何か良い方法はないかと自分でいろいろと情報を集めちゃう。すると『〇〇を飲んだらがんが消えました』とか『こんな治療をして長生きをしています』とか、さまざまな例が出てくるんです。 ただ、振り返ってみると、遠回りしたなと思います。もちろんセカンドオピニオンは重要ですが、どの先生も『これは早く取ったほうが良い』とおっしゃっていましたから。 結局2年間悩んでいるうちに、中にできたポリープが弾けて大出血を起こし、即入院する事態になりました。先生からは『症状が重いから、すぐに取らないと大変なことになる』って言われましてね。結局、あきらめざるを得ない状態になって全摘をしました」ということだったらしい。

結局、最初っから医師の言うとおりに従っていれば助かった可能性もあったかもしれない。2年も悩んでいたとは・・。結局、18年に膀胱を全摘出手術。22年10月、肺への転移が判明し、抗がん剤治療の影響で、腎臓に副作用が発現。昨年12月1日に左腎臓の全摘手術を行っていた。しかしその後も腰椎、骨盤、髄膜などに転移。12月4日、医師から治療の手だてがないことを告げられ、自宅に戻り12月9日に亡くなった。小倉さんは「医者が勧める標準治療を受けていたら」と後悔していたという。小説家で医師の知念実希人氏はこの話を知り自身の「X」で、標準治療と違う民間療法をきっぱりと断罪している。

「標準医療とは単語のニュアンスで『最新医療には劣る普通の医療』と誤解されることも多いですが、実際は『現在、エビデンスが確立している最善の治療法』です」と説明する。そして「民間療法の方が大金がかかるので効果が高いと思われがちですが、民間療法で標準療法を上回るデータがあるものは皆無です」と、自身の感触としては疑問視する思いも綴っている。続けて「(特に有名人が)がんと診断されると、怪しい民間療法の関係者が近づいて、高額な治療を勧めてきますが、どうか騙されないでください」と注意喚起をする。さらに「そのような業者は、病状が悪化したら『うちでは診られない』と一般の病院に患者さんを丸投げしてきます。騙されて、大金を奪われたうえ、がんが悪化して根治不能になってから、紹介されてきた患者さんを何度もみています」と告白した。最後に「『標準治療は、最善の治療法』ということをどうか覚えておいてください」と締めくくったのだ。

これに私も「激しく同意する」。

そう思っている矢先に今朝の新聞の一面の下部にも「何をしても駄目だった〇〇がこんなことで改善した」とか「病気がどんどん良くなる〇〇のやり方」などといった本や療法の宣伝が目に入る。病院やクリニックでは医学界で厳しい査定や評価を経て認められた治療を行っている。だが、それでも進行した癌を完全に治せるとは限らない。そこに民間療法業者がつけいる隙があるわけだ。病気で悩んでいる患者さんのそうありたいという願望に沿った、しかし効果のない治療法を提供するんだ。治るはずもなく、最後は何かと言い訳して知念氏が言うように「最後は丸投げ」だ。はあ・・。

私たち医師もこうした怪しい民間療法に対してはたいていの場合はNOを突きつけるようにしておかねばならない。そして標準的な医療、治療とはどういうものかを今のネット社会に発信しづけなくてはと思うのである。

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