「膀胱摘出をすぐには決断できなかった」という。膀胱の全摘というのは、精巣や勃起神経、前立腺など周りのものも取ることになってしまう。本人によると、やっぱり男として未練がましいところがあったので「ちょっと考えさせてください」と言って、インターネットや本でいろいろなことを調べた。本の中には『がんは切らずに治る』とか民間療法を紹介するものも多かったとのこと。「それらを片っ端から読んで、新しい抗がん剤を取り寄せたり、がんを活性化させない治療などに飛びつきましたね」「やっぱり少しでも長生きをしたいと思うので、他に何か良い方法はないかと自分でいろいろと情報を集めちゃう。すると『〇〇を飲んだらがんが消えました』とか『こんな治療をして長生きをしています』とか、さまざまな例が出てくるんです。 ただ、振り返ってみると、遠回りしたなと思います。もちろんセカンドオピニオンは重要ですが、どの先生も『これは早く取ったほうが良い』とおっしゃっていましたから。 結局2年間悩んでいるうちに、中にできたポリープが弾けて大出血を起こし、即入院する事態になりました。先生からは『症状が重いから、すぐに取らないと大変なことになる』って言われましてね。結局、あきらめざるを得ない状態になって全摘をしました」ということだったらしい。
これに私も「激しく同意する」。
そう思っている矢先に今朝の新聞の一面の下部にも「何をしても駄目だった〇〇がこんなことで改善した」とか「病気がどんどん良くなる〇〇のやり方」などといった本や療法の宣伝が目に入る。病院やクリニックでは医学界で厳しい査定や評価を経て認められた治療を行っている。だが、それでも進行した癌を完全に治せるとは限らない。そこに民間療法業者がつけいる隙があるわけだ。病気で悩んでいる患者さんのそうありたいという願望に沿った、しかし効果のない治療法を提供するんだ。治るはずもなく、最後は何かと言い訳して知念氏が言うように「最後は丸投げ」だ。はあ・・。
私たち医師もこうした怪しい民間療法に対してはたいていの場合はNOを突きつけるようにしておかねばならない。そして標準的な医療、治療とはどういうものかを今のネット社会に発信しづけなくてはと思うのである。
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