2024年6月19日水曜日

言霊が飛ぶ

昼の15時から外来業務が始まった。すぐにずっしり師長から「リハビリの患者さんの診察とカルテコメントを」と頼まれ、数人の患者さんを軽く診てリハビリ室へ促した。その中にちょうど50歳でリハビリに来ていた男性患者がいた。左の片麻痺であるのはすぐに分かった。で、診察室に戻ってから病歴を確認してみた。「50歳なのになんであんなになった?」と興味が湧いたからだ。

で、案の定というか脳出血が原因だった。6年前に発症し、他県脳神経外科病院で治療後、帰鹿し、リハビリのため当院に通院していた。私はずっしりさんに「50歳前に脳出血、その後麻痺が残るなんて人生もったいないって思わないか」と問いかけた。彼女は「ねえ」と相づちを打ち、そこに私は「ボウリングも出来ないし、麻雀もスムーズに打てないんだぞ」と言うと「そこぉ?」と。いやいや正直そう思っているが、無論それ以外にも様々なハンディキャップを負うのは明白だ。「だから高血圧をちゃんと治療しなきゃっていっつも言っているんだ」と高血圧をなめて治療に応じない40歳代50歳代の多いことを嘆いたのだった。

それから約30分後、「先生、救急依頼が来ています」とずっしり師長から連絡が入った。水曜午後は私が救急車担当だ。「どんな?」と聞くと「自宅アパートに入ろうといたら崩れ落ちて動けなくなったんだそうです。52歳男性です」だと。なにやら脳外科疾患ぽい症状だ。運ばれて来た患者は意識はしっかりあるも右半身の知覚異常がありやや発語が悪かった。すぐに頭部CTの指示を出し見てみると・・案の定脳出血だった。右被核部の出血だ。病歴を確認するとなんと昨年10月に高血圧の治療が開始されていた。

内科のタクミDrから4、5年前から健診などで高血圧治療を勧められていて、ようやくその気になったということで、翌11月は私が降圧薬のDo.処方をしていた。しかしーだ。その後パタッと来なくなっていた。本人に別の病院で処方してもらっていたか尋ねたが、本人判断で受診を止めていたのだ。あーー。↓が左脳の被核出血のCT写真で、これはネットから拾ったものだが、ほぼ同じ所見だ。ここまではっきり所見があれば、後は脳外科のカワゼンDrを呼んでこの後の入院指示を依頼して私の役目は終わった。

高血圧ってまず症状がないのよ。痛くも痒くもない。なのに医者は「毎月病院に来て薬をもらって飲んで下さい」と言う。それって元気な50歳には「めんど。通院して薬飲まなくてもいいっか」となりがちなんだ。薬開始するときには「基本的にずっと飲み続けないといけない」って説明はするんだがー。一生飲まないと行けないというとそれだけで飲むのを止める人がいるんだよ。でも高血圧ってたいてい一生続くの。薬飲むだけで上のような病気を起こさずに済めばその後の人生がどんな豊かになることか・・。

問診を詳しく聞くと、崩れ落ちた後30分近く動けず倒れていたところ、隣人に発見され救急通報となったそうだ。で、その崩れ落ちた時刻を逆算すると、ちょうど15時ごろだった。はっ!私とずっしり師長が「50歳くらいで高血圧放置して脳出血する人がいるんだよっ」って言っていた、まさにその時だったのだ。怖っ!

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