2026年6月11日木曜日

「鉄槌教師」と「甲質」

昼休み、何気なくNetflixで面白いドラマがないかなと見ていたら、ドラマ部門で「今日のシリーズトップ10」の1位に韓ドラの「鉄槌教師」というのがあった。日本のドラマを差し押さえての1位だ。↓主役のキム・ムヨル。

番組紹介文には「目には目を、歯には歯を。特別権限を有する監督官たちが、いじめを働く生徒たちに鉄ついを下す。「未成年裁判」のホン・ジョンチャンが贈る、胸がスカッとする痛快アクション」とあり、なんか面白そうじゃないか。

さっそく第1話のテハン高校の回を見てみる。うわ〜、学校の廊下や教室で陰湿ないじめが横行している。ターゲットを絞りながらいじめを繰り返す生徒は政治家の息子とその仲間たちでいじめられる生徒ギョンミンにとっては学校が地獄と化している。彼の代わりにいじめの対象になった生徒は飛び降り自殺するが、加害生徒たちは政治家のコネと、悪評を恐れる校長による隠ぺいにより罪に問われない。いじめの対象は再びギョンミンへと移る。こんな描写が続くと胸くそ悪く、見ていられない気にもなるが、ちょうどそのタイミングで加害者の生徒の背後にやって来るのが教権保護局の監督官ナ・ファジン(キム・ムヨル役)だ。その生徒にまずは一発食らわす。彼は加害者に容赦なく暴力を振るう。被害者の立場というものを分からせるのだ。これはいい。見ていてスカッとする。このドラマがいわゆるサイダードラマだと言われるのもよく分かる。

ただ、先生が生徒に暴力を振るって制裁するのはいかがなものかという批判はこのドラマの原作の時点からあったそうな。しかし教権保護局という架空の政府機関を設定し、その機関には強力な権限を持たせ暴力にも制限はないということにして話は進む。このドラマの原題は「真教育」だが「鉄槌教師」の方がずっと見たくなるいいタイトルだ。

1時間弱でそれぞれのエピソードが終わり、次の第2話第3話も一気に見ちゃったよ。2話では不良学校での悪ガキ制裁、3話ではSNSでインフルエンサーになっている女生徒が担任教師に対して虚偽の告発を行い世論を操作を行っていてそこに主人公の一人女性保護管イム・ハンリム(チン・ギジュ役)が介入し、デマを粉砕して真実を突きつける。男性主人公のキム・ムヨルは私は初めて見る役者だと思ったら2008年の一枝梅(イルジメ)に端役で出ていたそうだ。それじゃー知らないわ。でもアクションも演技もなかなかいい。チン・ギジュは2018年の「ここに来て抱きしめて」の女主人公役は覚えていた。今回の役は軍隊上がりの変人(狂犬)といった側面がありなかなか魅力的だ。「ここに来て〜」よりずっといい。さらに教権保護局の局長に名優イ・ソンミンが配され安心して見ていられる。
それにしても韓国の問題児や親、政治家など法律を犯していても権力があればどうにかなるという態度がかなり目立つ。日本だとそこまではの態度は取らないだろうと思えるが、実際に韓国では力ある者はそうでないものに対していかようにも振る舞えるというのは本当のようだ。私が以前よく見ていたYouTubeチャンネルの「カイカイ管理人」さんが自身のチャンネルでそこを分かりやすく解説している。カイカイ管理人さんは韓国のトピックス、マスコミ記事など10年以上も見続け(翻訳もし)ている韓国ウォッチャーでなかなかの分析力の持ち主だ。

「韓国人の中心思想…韓国人の言動の根底にあるもの」→https://www.youtube.com/watch?v=--2-EoLUnHM

韓国語には「甲質(カプチル)」という言葉がある。直訳すると「甲(力のある側)のふるまい」という意味で、権力や立場が上の人が下の者に対して不当な圧力や要求、横暴な態度をとることを指す。甲のごり押し、甲の横暴、甲の権力濫用、ほどの意味となる。乙に対する甲のあくどい性質、やり口、傲慢(ごうまん)さ、強引さという意味も含まれ、上位にあるその地位を利用して、下請けや弱き者たちに無理難題を押し付けたり金を支払わなかったりする行為だ。これが社会のあらゆる場面で出てくるらしい。大韓航空で起きた「ナッツ・リターン事件」もそうだし、韓国時代劇で朝鮮王朝が常に権力闘争が繰り返し起きているのは「甲」にならないと自分が「乙」になりひどい目に遭うと分かっているからだ。

社会の中で序列が決定され「序列の下位者には何をしても許される」という考え方が韓国には蔓延しているということだ。ずっと以前にも書いたが、井沢元彦さんが著作の中でも指摘しているように、これは儒教、特に朱子学の教えが朝鮮時代に徹底されたことに由来しているのだろう。朱子学ではそこに100人いたら1位から100位まで順序づけがなされるという。生まれが1歳でも早いならそっちが上でため口はきけない。そんなシーンが韓ドラでも出てくる。日本でも朱子学は特に江戸時代に広まったが韓ドラほど徹底はされなかった。その違いが社会や文化の面にまで及んでいるようだ。

このドラマがヒットしているのは「甲質」による横暴さに韓国人のみならず多くの人が大いなる不満を抱いているからだろうな。うん。

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