出水のスチョル先生のところに内視鏡バイトに行った。検査の合間合間に先生と世間話などよくするのだが、今日の話題になったのが「味噌樽(みそだる)」だった。実はこれを鹿児島弁で「ミソダイ」と訛って言うらしい。日頃は味噌樽なんて言葉を発する機会はないし「ミソダイ」とは初めて聞く言葉だった。
スチョル先生は自転車を走らすのがレジャー兼体力作りである。当然、同好の士が出水にはいて70歳代の某男性もそうだった。で、その男性といっしょに新幹線に乗ることになった際、意外なことを聞いた。「実は新幹線に乗るのはこれで人生で二度目なんです」と。スチョル先生は少し驚いたそうだ。九州新幹線が部分開業してすでに20年は経つ。出水駅は停車駅だから新幹線に乗る機会も他の地方都市と比べて多いはずなのにそんなに少ないとは。そこでスチョル先生はこうつぶやいた。
「70歳代男性さんはミソダイ(味噌樽)だぁ」
これ、どういう意味なのか。味噌樽って家庭の片隅に鎮座して滅多に外で見かけるものではない。それで鹿児島では「あまり遠出をしない主婦」を意味する言葉なんだそうだ。ほうほう「うちんかかは、みそだいやっで、うぜけんのこたぁ、ようわかいもはんでや〜」なんて言うのかな。「家内はあんまり遠出をしないタイプだから世間のことはあんまりよく知らないんですよ〜」といった意味だ。それが後に宮崎の友人ドクターとの会話で思わず「ミソダイ」という言葉を使ったところ、「ミソダイって?」と聞き返されたとか。スチョル先生、昔から知っている言葉だったし周囲も使っていたので共通語くらいに思っていたらしい。少し戸惑っていると、奥さんのいいちこさんに「あなたが自分で作った造語なんじゃない」なーんて言われたりした。それでネットで検索してみると、昔からの鹿児島弁にちゃんとあると知れたそうな。今は令和の御時世、専業主婦が減った上に味噌樽そのものも使う家庭が減って来ている。ましてや訛ってのミソダイだなんて言葉はほとんどの人は知らないし、それを例えで使うとなると「はて?」になること必定だ。意味を知って私など味わい深いものを感じたが、今後は死語になっていきそう。それにミソダイという言葉、その言い回しからして昔の鹿児島の男尊女卑的なニオイもするしね。せめてこてる日記に「そんな言葉もあったね」と残すにとどめておこう。

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