2025年11月3日月曜日

ワールドシリーズ最終戦は松山商対熊本工の試合とそっくり

日付は変わったが、まだ昨日のワールドシリーズの余韻が残っていた。YouTubeなどで両チームのファンの観戦実況の様子など見たりしていた。どっちもハラハラドキドキ、バンザイガックリで面白い。 ドジャースファンの中には喜びすぎて自宅ドアをでて庭のプールに飛び込む人とか(それを見て飼い犬が吠えている(笑))、ブルージェイズファンの中には液晶TVを渾身のパンチでぶっ壊す男性が2人もいた。怖っ。(ただし、単なるファンではなく、賭けていて、勝てば日本円にして4〜500万は入っていたんだってさ)→https://www.youtube.com/watch?v=bkdo_hfPqfo

私が「この試合、もしかしたら勝てるかも」と感じたのは、9回裏の大レフトフライをパヘスが捕球し、延長に入った時だった。長年いろんな野球を見てきていて似たようなシチュエーションがフラッシュバックしていた。私が思い出したのは1996年の夏の高校野球決勝のシーンだ。あの松山商対熊本工戦である。3対3の延長10回裏、熊本工が攻めて犠牲フライでもサヨナラというシーン。この回、熊本工は先頭の星子が2塁打を放ち、次打者は送りバントで1アウト3塁になった。そこで松山商は2人の打者を敬遠し満塁策を取る。その時にはライトを守っていた投手の新田を澤田監督は本来の矢野に交代した。これはバックホームになった場合少しでもホームで刺せる可能性を残すためだ。そしてご存じそのとおりの結果になる。

昨日のワールドシリーズ、9回裏はほぼ同じ場面だった。1アウト満塁になってドジャースのロバーツ監督はセンターを本来のパヘスに交代した。これはバックホームを想定して脚の怪我の影響の残るエドマンより肩も強いパヘスにしたわけだ。次打者は山本の低めの球を引っ掛け内野ゴロになりバックホームで2アウト。これでまあ犠牲フライサヨナラのシーンはなくなった。しかしパヘスに交代させていたおかげで、より確実に大飛球を捕れて延長戦に持ち込めたってことだ。

話を戻すと、サヨナラ勝ちと思った熊本工ナインは星子の証言によると「頭の中が真っ白のまま呆然と守備に就きましたが、皆も同じだった。11回表、先頭の矢野が初球を叩いてレフトの澤村が後逸し・・」気持ちを切り替えることが出来ず結局3点を入れられ負けてしまった。奇しくもピンチをしのいだドジャースが先攻で立場は逆だが9回にホームランで同点に追いついたのも似ている。守備を変えたらそこに打球が飛びアウトにしての延長戦ゲームというシチュエーションがそっくりだった。「延長に入って先に点を取り、結果勝てるかも」と松山商とドジャースが重なって見えたんだ。

夏になるとよく高校野球が話題の番組がTVなどで組まれる。今年は大逆転劇の試合の特集だったが、名試合の時には必ずといっていいほど松山商対熊本工戦は紹介される。私は戦前や戦後の名試合も書籍などを通じてよく知っている方だが、一つだけあげろといわれたらこの試合だ。舞台、白熱性、ドラマ性、教訓など全てが詰まっている。「まだ同点なのに『勝っていたのに』とか『負けた』と思ってはいけない」のだ。松山商は9回裏2アウト、後アウト1人と優勝という場面で1年生にホームランを打たれる。松山商ピッチャーの新田はまるでマンガのように膝から地面にがっくりと崩れ落ちる。それを見て私は「あ、熊本工が勝つかも」と思ったが、松山商ナインは内野陣がすぐさま抱え起こし、声を掛け「まだ大丈夫」と正気に戻らせていた。後に熊本工の星子は「そこが『夏将軍』と呼ばれ結局優勝5回もする松山商と優勝を逃し続けていた熊本工の違い(準優勝3回)だと、後になって知った」と語っている。がっくりしてライトの守備についていた新田を万一に備えて矢野に交代させた澤田監督もしかりだ。

今回はワールドシリーズ8回優勝でこの6年で3回出場のドジャースと2回優勝で32年ぶり出場のブルージェイズと比べると、経験や総合力でわずかにドジャースが優っていたといえるんじゃないか。今回のドジャースは、9回裏までは3点先行され1点ずつ返していき9回にホームランで同点した熊本工の立場で、延長戦に入ってからはサヨナラ負けの危機を外野手の奇跡で防ぎ次の表の回で勝ち越した松山商の立場に入れ替わった。松山商もドジャースもいわゆる伝統の力が最後にはものを言った。だから熊本工もブルージェイズも今はそうでも地道に力を付けていけば何十年かあるいは百年後かは常勝するチームになれるかもしれないんだ。ついこの前の高校野球九州大会で熊本工はベスト4に入った。これで来年春の甲子園出場が濃厚だ。頑張って欲しい。野球はまだまだ続く。

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