今、来週の医局会でのレクチャーに向けて資料集めとスライド作りをやっている。テーマタイトルは「消化管異物の世界」だ。
青雲会病院に勤務するようになって26年近くなる。それまで大学病院と市中の比較的大きな病院への勤務が多く内視鏡もたくさんやって来たけれど主に癌や潰瘍があるかないかを見つけるのが仕事だった。しかし青雲会病院に来てからぐっと増えたのが消化管出血と消化管異物だ。どちらも緊急の内視鏡治療を要することが多い。出血は下部の出血、特に大腸憩室出血が数も多いし難しいケースも多く、たびたびこてる日記でも取り上げている。出血ほどではないが消化管異物も日記に取り上げてきた。レクチャーでは出血は以前も取り上げてスピーチしているので、今回は異物症例にしよう。先月、1日で2例異物取りだしの日があった(1月8日)のがきっかけだ。
私の忘備録やカルテ記録、それと外科の信号Drのカルテ記録も調べてもらって合計39名の異物症例を拾うことが出来た。ごく一部を除いて2010年以降の症例でレントゲンや内視鏡画像が残っている。今日はその患者年齢を調べグラフにしてみた。
意外にも全年齢層に消化管異物のケースはある。やはり70歳代以上の高齢者に多いことが分かる。原因として多いのが義歯(部分入れ歯)とPTPシート(薬剤シート)の2つだ。ともに鋭利な部位がありこれらが食道や小腸の狭い部位にひっかかりそこが壊死し時に穿孔して手術になることすらある。ただこれらは誤って飲み込んだケースで一度起こしても次にまた来ることはほとんどない。しかし青雲会病院は違うのだ。繰り返し、しかも一度や二度でなく五度も六度も異物を飲み込んでやって来る人たちがいるんだ。近くに県立の精神科の病院があるからで、比較的若い患者さんが自傷行為と同じような理由で異物を飲み込むあるいは入れ込むのである。39名中13名が意図的に異物が入れられたケースで実に3分の1を占める。患者は比較的若い女性に多い。飲み込む対象は様々で紙おむつ、鉛筆、ペン、電池、薬(軟膏チューブ)、金属(ボルト、ナット)、ホッカイロ、スポンジなどなど。内視鏡をする側としては「また来たの」と言いたくもなるくらいで、全部で32回も内視鏡もしくは手術適応になった。1人平均2.5回も起こしているのだ。↓が意図的な飲み込みで内視鏡になった件数のグラフで10代から40代に集まっているのが分かる。そのうち1名は手術までして助かり退院したが1ヶ月後にまた呑み込み、今度は窒息して救急搬送されいったん入院加療となったものの結局亡くなった。どうすればそのような人たちを異食行動させないかについては内視鏡医ではどうにもならない。中には飲み込んだもののきつくて「取って欲しい」という態度の人もいてその時は素直に帰っていくがまたやるんだ。最初のころは私も説教ではなく優しく「もうしないようにしようね」なんて言ったりしたがここ10年ほどは何も言わない。言うだけ空しくなる。
ともかくまだ1週間以上ある。どうにかまとめて他のドクターたちにも注意喚起しておきたい。どのようなケースで内視鏡に早く送るべきか、中にはレントゲンやCTで異物が写っているにも関わらず何人かのドクターの指摘を免れ、結局危ない状況になり手術で一命を取り留めたケースもある。いやはや、簡単に終えられると思っていたのに、やり始めると症例数は増えるわ、言いたいことは増えるわでまたギリギリになりそう。しばらくはこれにかかりっきりや〜。


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