2020年5月18日月曜日

「エール」が面白くなってきた

 NHK朝ドラの「エール」はあまり観ていなかった。しかし先週末の主人公が早慶戦の応援歌を頼まれに来たあたりから興味が出て今日も観てしまった。

言うまでもなく主人公小山裕一は作曲家の古関裕而をモデルにしている。他の出演者も音楽関係では小山田耕三は山田耕筰、山藤太郎は藤山一郎、木枯正人は古賀政男、佐藤久志が伊藤久男とそれと分かる役名にしている。

早稲田の応援団員が主人公に応援歌を頼んだのは「慶応が数年前に作った応援歌『若き血』の出来が良く、そこから早慶戦で連勝を重ねられ、対抗措置として匹敵する歌が欲しかったから」というのは史実通りだ。公募して「紺碧の空」という詞はすでに出来ていて選者の西条八十が一字一句の訂正も必要ないと太鼓判を押した歌詞だ。そういえばドラマでは固有名詞を変えることが多いが、「早稲田」も「紺碧の空」も実名をそのまま出している。これは実際の歌を変えるわけにいかないからだろう。名前は変えても特に差し障りはないが歌そのものはそう簡単にはいかない。「名曲だぁー」と劇中でみんなが感動しても視聴者が聴いて感嘆するような曲はおいそれとは作れないからだ。(紺碧の空→https://www.youtube.com/watch?v=AaKrKqxdpXM)、ついでに「若き血」→https://www.youtube.com/watch?v=5Z-7n29gu34
虚実ない交ぜのエピソードの中、劇中で「丘を越えて」を山藤太郎(モデル藤山一郎)が歌っていたのは史実通りで、慶応普通部出身の藤山一郎が親の借金を返すためにレコードを吹き込んでいるとかもその通り、また「若き血」の歌唱指導をしたというのもこのあと出てくるようでこれも実際のエピソードだ。

「紺碧の空」は今でも早稲田大学やその系列校では頻繁に応援歌として使われている。ただ古関裕而の出世作になったとは私は今回初めて知った。応援歌ではよく知られているように阪神の「六甲おろし」や夏の甲子園の「栄冠は君に輝く」他にはNHKのスポーツ中継テーマ「スポーツショー行進曲」、歌謡曲では「長崎の鐘」などを知っている。実は慶應義塾の別の応援歌「我ぞ覇者」、巨人の応援歌「闘魂込めて」も作曲している。ライバルの曲も書いているわけで頼まれれば特にこだわることなく作る職業作家だったのか。ところが、劇中ではそうではない。自分らしい曲作りにこだわってなかなか「紺碧の空」が作れない。それにコロムビアの専属作曲家となってもことごとくボツにされて1枚のレコードも出せていない状況だ。それが頼まれればいい曲を書くようになるきっかけが今週のテーマ、そうなのかもしれない。

このあと「六甲おろし」も1936年(昭和11年)と年代が近いから多分エピソードとして披露されるんじゃないか。後は戦後の「長崎の鐘」は原爆で亡くなった長崎医科大(当時)の永井隆医師のエピソードは必至だろう。藤山一郎はこの曲で第1回紅白歌合戦の大トリを務めているからなおさらだ。さらに「栄冠は君に輝く」のエピソードもドラマ向きだ。第30回を記念して公募で選ばれた作詞は加賀大介作だが、当初は高橋道子となっていた。これは懸賞金目当てと言われるのを嫌った加賀が婚約者の名前を使ったためである。いつか本当のことをと思っていたが昭和43年の第50回記念の際の取材時に事実を明かした。加賀大介さんは元野球少年。しかし試合中の怪我による骨髄炎のために右足切断を余儀無くされ、野球を断念した経緯がある。この詞には、野球に対する加賀の熱い想いが強く込められていて、特に3番の「美しく匂える健康」にそれが表れている。私がこのドラマの制作者なら絶対に使うなこのエピソードは。(ちなみに私は古関裕而作曲のレコードはこの曲と「スポーツショー行進曲」を買っている)

あと伊藤久男とのタッグで「イヨマンテの夜」や「暁に祈る」「露営の歌」などもヒットさせる。ただこのあたりは戦時歌謡が多いから微妙だ。でもそこはひるまず描いて欲しい。誰もが聖人君子ではないし反戦の闘士でもない。モデルの佐藤久志も重要人物として出てくるからそれらの歌のエピソードも出てくると思う。うーん、あまり期待していなかった朝ドラ「エール」、楽しみになってきたが、6月末でいったん放送が休止される。これまたコロナのせいだ。毎回言っているが今年はコロナ、これにつきるわ。

0 件のコメント:

コメントを投稿