2026年1月16日金曜日

それは「伝染性単核球症」でしょう

午前の仕事が終わって院長室でくつろいでいると、5階病棟から連絡が入った。「もしもし、トマリン先生の患者さんのことですが・・」トマリンDrは昨夜が当直で今日は午後から早退して不在だった。数日前に入院させた20代女性の件だという。 

電カルでその患者のカルテを開き、どういう用件か聞いてみた。すると、患者が「入院後も目の周りのむくみが残り、いろいろ検査しているようだけどまだはっきり病気の原因を聞いていない。もっと詳しく検査して欲しい」とのことだった。いや、ちょっと待って、急にそう言われてもねぇ。電カルで病歴や画像や採血検査結果など確認してどうしたものかと見ていると・・まず肝機能がそこそこ悪いのが気になった。腹部CT画像で脾腫(脾臓が腫れている)があるのもおかしい。入院時に一気に細菌&ウイルス検査はやっていてどれも引っかかっていなかった。何か肝炎を起こすウイルスでも・・と思っていると、ついさっきらEBウイルスが陽性とのFAX報告が届いたという。そこで「本人にEBウイルスが悪さをしたんでしょうとだけ言っておいてくれ。追加の検査はすぐには不要だ」とだけ看護師に伝え、午後の外来に出かけた。

外来が一段落し、私自身も頭を整理するためにEBウイルス関連の疾患をネットで再確認した。このウイルスが起こす病気で有名なのが「伝染性単核球症」だ。実はトマリン先生、採血結果で異型リンパ球が出ていたためにその疾患を疑い検査を出していたのだ。その結果が出る前に帰宅していたので、私に連絡が来たってことだ。「今日の治療指針」によると「伝染性単核球症」は「EBウイルスによる感染症で,発熱,咽頭炎,リンパ節腫脹などに加え,血液検査で単球や異型リンパ球の増加,肝機能障害などを認める」とある。ああ、この患者さんはまさにそうじゃないか。私も大学病院時代に外来でこの病気の患者さんを診察したことがあり、青雲会病院に来てからも数人診たことがある。発熱や扁桃炎から疑ったり、眼瞼周囲に浮腫がでることもある。さらに肝機能異常を起こすことが多いので血液検査結果から診断が付くこともある。

そこで外来を後にして病棟に行ってみた。すでに看護師から病名は患者に伝えられてはいたが、私も診察はしておこう。診れば確かに目の周りが腫れっぽく、さらに喉を診ると扁桃腺に白苔がべっとりとついていて、頚部を触診するとリンパ節痛があった。↓はネットで拾ってきた画像だがほぼいっしょの所見だった。
赤文字にある症状、検査結果が全て出そろっている。「EBウイルス感染による伝染性単核球症」これで間違いない。で、患者本人に「この病気はたまたまEBウイルスに感染していなかった若い人が発症するもので、特効薬はないが解熱剤や点滴で治療をするが必ず良くなる、いつまでかと言われると断定は出来ないが1ヶ月以内には治る」と説明した。治療指針にも「日本では2~3歳までに約70%がEBウイルスに感染し,20代では90%以上が抗体を保有する.10~20代が好発年齢である」と書かれているとおり、一度感染すると終生免疫を獲得するので中年以降の大人に発症するケースはほとんどない。唾液を通して感染することが多く、キスや飲料の回し飲みなどからが多いとされている(過去のこてる日記では2015年6月15日に話題にしていた→「唾液はどこから」https://koteru-nikki-2015.blogspot.com/2015/06/blog-post_15.html)。

患者さんはまだ若いが既婚者でその辺の感染経路は不明だが、それは病気の予後とは関係なく、「必ず良くなるので顔のむくみも心配しなくてよい、ただ脾腫があるので激しい運動は1ヶ月は禁止です」と説明し病室を出た。

ナースステーションでこの一件が話題になると、「あら、私は大丈夫なののね」とアラフォーの鳥羽Nsが反応した。いつもは若い方に組みするのに、この時ばかりはそこそこ年を重ねていることに安堵する様子だった。そうそう、年齢が上でも悪いことばかりじゃないよね〜、ハハ。

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