2025年7月1日火曜日

慢性糸球体腎炎はなぜにそんなに減っているのか

今日の医局会のレクチャーは泌尿器科の合い言葉Drが担当だった。で、テーマは「慢性透析療法の現状」というもので透析療法の基本から種類、患者数の推移など門外漢のDrには新鮮な内容だった。透析患者数はずっと右肩上がりで増えて来ていたが10年くらい前からそのの伸びが鈍化し始め、2020年のコロナ以降は若干減少もしているという。それは私もある程度知っていた。透析部門の担当から毎日のように院長への報告を受けているからねぇ。合い言葉Drが提示したグラフや表の中で特に印象的だったのが、透析にいたる病というか「慢性透析患者 原疾患の推移」というグラフだった。
上のグラフの青色の疾患は「慢性糸球体腎炎(OGN)」のものである。1983年から2023年まで直線的に減少し続けているのが分かるだろう。私が医学生だった頃、腎機能が悪化して透析を受ける患者の7、8割が慢性糸球体腎炎だったのだ。これは原因ははっきりとは分からないが免疫の異常などから腎組織がダメージを受けその機能が低下していく病気だ。その後「糖尿病が原因で腎機能低下から透析になる患者が増えてきている」としょっちゅう聞いていた。2010年辺りを境にその患者数が逆転し今は糖尿病がらみの透析患者が一番多い。ただ、それもグラフをみれば分かるが(茶色)最近鈍化して高止まりしてきている。まあそんなワケで透析患者総数が減少気味になってきているのだ。

昔、スチョル先生からある女学生の腎機能が悪く「定期的に検査や診察を受けるよう」指導していたつもりだったがその患者は来院することなくある時期に腎機能が相当悪化してしまい透析を受ける羽目になったとか聞いたことがある。グラフを見て「なぜに慢性糸球体腎炎患者がこんなに直線的に減少しているのだろう」と疑問に思った。レクチャーではそれを聞くことはしなかった。ネットで調べてみると・・・回答するのはChatGPT先生だ。

1. 学校検尿(尿検査)制度の効果

1970年代以降、日本では小中学生に対する学校検尿が全国的に実施されるようになりました。これにより、早期に無症候性の血尿・蛋白尿が発見され、早期の診断・治療介入が可能に。結果として、重症化して慢性糸球体腎炎に進行する前に治療・経過観察が行われるようになったことが大きいです。

2. IgA腎症に対する診断・治療の進歩

慢性糸球体腎炎の中で最も多いのがIgA腎症ですが、これは以前は進行してから発見されることが多かった病気です。現在は腎生検による早期診断や、ステロイドパルス療法、扁桃摘出+ステロイド療法などの治療法が確立してきました。治療によって腎機能の低下を防げるようになったため、「慢性糸球体腎炎」として進行した症例自体が減っています。

3. 診断名の見直しと再分類

近年では「慢性糸球体腎炎」という包括的・あいまいな診断名の使用が減少しています。代わりに「IgA腎症」「膜性腎症」「巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)」など病理学的な分類に基づいた診断が主流になっています。つまり、「CGN」というラベルを使わなくなった側面も統計上の減少に影響しています。

4. 生活習慣の改善・高血圧管理の進歩

高血圧は腎機能の悪化を促進する要因ですが、日本では塩分制限や血圧管理の啓発が進んだことも影響しています。特に家庭血圧計の普及により、日常的に血圧をモニタリングする人が増えたことで、腎臓病の進行抑制にもつながっています。

まとめ(キャッチーに言うと)

「見つけるのが早くなった」「治す技術が上がった」「名前の付け方が変わった」
――この三拍子が、慢性糸球体腎炎を“減らした”立役者です。

なるほどー。私が中学か高校のころだったかな。それまで寄生虫などの検便検査が学校検診にあったが、それがなくなって「これからは検尿をするようになりました」と聞いた。まさに1970年代の学校検尿開始の記述と一致する。学校での検診ってばかにならない。3月に佐賀県でのピロリ菌対策検診の話題をネタにしたがその効果はいずれはっきり出ると私は書いた。同様に数年前から書いている子宮頸がんワクチン接種も学校で全面的にやるべきなんだ。この二つで胃がん、子宮頸がんは将来9割以上も減少するはずだ。

腎症の話題で図らずも学校検診の重要性が改めて実感出来たわ。

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