患者は50歳代女性。このところ顔色すぐれず、ちょっとした坂を歩いても動悸がするという症状があった。職場の人にも体調が悪そうと受診を勧められ、採血を受けるとヘモグロビンが5.9と極端な貧血の所見であった。月経が多量な比較的若い女性にたまにこうした出血性の貧血があるが、その人はすでに月経はない。となると消化管出血、胃や大腸に出血性の潰瘍、あるいは腫瘍が隠れていることが多い。
で、胃カメラを実施すると、潰瘍や腫瘍はなかったが、毛細血管の集まりのような所見が4、5ヶ所あった。一見それほどの出血源には見えないが、意外なほど出血を来すことが多く、これが原因と思われた。試しに内視鏡から送水を行うとじわぁ〜と出血をし、やはりこれが犯人だった。
そこでAPC(アルゴンプラズマ止血)を実施した。毛細血管をアルゴンガスで焼却するのだ。最近のこてる日記では放射線治療後の直腸に出来る毛細血管出血治療でこのAPCをよく紹介している。この患者さんは放射線治療はなにも受けていないが体質なのか胃の粘膜に毛細血管腫が散在していた。上の写真のように粘膜表面を焼くと血管そのものがつぶれて潰瘍化する。それが治ると出血しなくなるのだ。これを他の毛細血管腫にも行った。そして採血では鉄もかなりの低値ゆえ、鉄剤を処方した。しかし鉄剤では胃がもたれ吐き気がするとのことで点滴の鉄剤を行った。1ヶ月もすればかなり正常値に近づくはずだ。このAPCという手技、最近の内視鏡治療には欠かせないものだ。動脈性の出血には合わないが毛細血管系の出血に本当に役立つ。似たような略語でメジャーリーグのシカゴ・カブスにPCAという選手がいる。正式にはカブスのピート・クロー=アームストロングという名で俊足巧打で活躍中の外野手だ。3月の東京ドームでの対ドジャースとの開幕戦にも出場し日本人にもその名を覚えられた。APCはそれが出てきて約30年くらいになるが、PCAはまだ23歳で1年くらい前にメジャー昇格し、今年ブレイク中の若手だ。東京ドームシリーズでは奇抜な髪の染色でも話題になった。この2つ、略語は似ているが全くの別物だ。ただ私の中では最近活躍中という点で単に似ているということ以上に共通点があるのだった(笑)。
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